アイルランドのレニハン財務相はRTEラジオで欧州連合(EU)ならびに国際通貨基金(IMF)からの金融支援を正式に要請することを推奨する決意であることを表明しました。

現在のところ支援額は未だ詰められていません。

ウォールストリート・ジャーナルによると今回の決定の背後にはアイルランド危機がポルトガルやスペインへと伝染(contagion)することを恐れるドイツからのプレッシャーが強かったようです。

さて、アイルランドが欧州金融安定化取極(EFSF)により欧州連合ならびに国際通貨基金からの支援を受けるということは何を意味するのでしょうか?

僕の考えではこの救済の持つ意味は次の2つです。


【痛み分けが無かったこと】
一つ目はEFSFがアイルランドのデフォルトを救ったことで、アイルランドの銀行にお金を貸した欧州の金融機関はその投資判断の誤りの責任を一切、問われなくて済むという点にあります。

アイルランドの銀行がやばい不動産デベロッパーなどに貸し込み、そのまずい融資判断が貸倒に至ったという事実はもう元に戻すことはできないのですから、その損失の穴埋めを誰かがしなければいけないのです。

本来であれば銀行が倒産した場合はその銀行と銀行への出資者が「痛み分け」するのが市場経済の原理ですが、今回は銀行への出資者(=この文脈ではアイルランドの銀行の社債保有者)は難を逃れたということなのです。

その分のしわよせは将来、EFSFへの借りを返してゆかねばならないアイルランド国民に来ます。今回の措置が非市場的な解決方法で欧州連合の「寄り切り」勝ちとなった点は極めて重要です。

【ブリュッセルへの権限移譲】
二つ目はアイルランドの債務がEFSFを通じてブリュッセルの官僚(Eurocrats)たちによって管理されることはアイルランドの国家主権(この場合は財政主権)が知らず知らずの間に欧州連合に乗っ取られたことを意味します

FAハイエクは『隷属への道』で次のように述べています:

行政上の些細な業務を外郭組織などへ権限移譲することは一見すると日常茶飯事の事のように思われるが、それは民主主義がだんだんその決定権限をテクノクラートへ委ねてしまう第一歩なのだ。


もちろん欧州連合の人たちは別にアイルランドの主権を侵害するつもりで今回の支援を行っているのではないことは百も承知です。

しかし権限の集中(consolidation of power)はチェック&バランスを弱め、権力の腐敗やEUという欧州各国の上に乗っかっているオーバーヘッド(間接部門)の肥大化を招きやすいです。

欧州は1990年ころを境にして各国レベルでのレファレンダム(住民直接投票)で示された民意を無視し、テクノクラートの巧みな迂回作業で欧州連合の存在意義をアピールする、一種の修辞的官僚制度への道を邁進しています。

若し今回のEFSFによるアイルランド救済みたいなことがポルトガルやスペインにも適用されれば、それは欧州経済の一層の活力低下を招くと思います。