かねてから予想されていた通りドイツはアイルランドに対して現在12.5%の法人税を引き上げることを要求しました。

これほどコミカルな要求もありません。

もちろんアイルランドの法人税率は他の欧州諸国に比べて低く、上げようと思えば上げられなくもありません。

問題はアイルランドには法人税増税どころかそもそも膨大な焦げ付きを抱えた銀行の処理をどうするか?ということに関するコンセンサスすら出来ていないという点にあります。

今回、アイルランドの銀行を救うべきだと強く主張したのはドイツです。

その理由はアイルランドの銀行が倒産した場合、その銀行債を沢山抱えているドイツの銀行に危害が及ぶことを心配しているからです。

アイルランド国内の世論は割れています。

「これは民間不動産デベロッパーと民間銀行との間の問題なので、この際、銀行は一旦潰した後、政府がエクイティーを注入するかたちで再生すればよい」という議論も根強くあるのです。


若し一旦、アイルランドの銀行を潰してしまう場合は銀行債を持っているドイツの金融機関も「痛み分け」になります。だからアイルランドにとってはこちらの方が負担が少ないのです。

アイルランドが先週までなかなか態度をハッキリせず、支援の要請から逃げ回っていた理由はそれです。

ドイツは「それじゃ駄目だ。われわれの支援を受け、その支援に際しての条件を呑みたまえ!」と無理矢理救済を押しつけています。

このプレッシャーに負けてアイルランドのレニハン財務相は先週末、ドイツがリーダーとなっている欧州連合ならびに国際通貨基金からの支援を受け入れる方向で行くと発表しました。

そのとたんに連立政権を形成している緑の党が「もう与党とは一緒にやれない」と宣言し、連立解消を表明しました。このためアイルランド議会は解散総選挙となる可能性が高いです。

問題は解散総選挙となると与党のフィアンナ・フェイル党は1月の解散総選挙で議席数をさらに落とすことは確実であり、そうなると極めて細分化されたアイルランド議会は多数派を形成できないまま漂流することは確実だという点です。

法人税の増税には当然、議会の承認が必要です。でもまだこの難問に対峙する前からアイルランドの連立与党は「潰走状態」に陥っているわけで、ドイツの要求がすんなり通らないのはもう誰の目にも明らかです。

それではなぜドイツはそんな漫才のような要求に固執しているのでしょうか?

それはドイツ国民に対する体裁を繕う必要があるからです。

われわれ相場に生きる人間はそんな上っ面のレトリックを「ハイ、そうですか」と額面通り受け止めてはいけません。

実はPIIGS諸国は今回のアイルランド同様、政治的コンセンサスがきちんと出来ていない国が多いです。

ギリシャはその代表例ですし、スペインもアイルランドと政治構造は同じです

だからこそ今回、アイルランドの緑の党が連立政権から離反を決めたニュースが流れた瞬間に先が読める投資家は「そろそろスペインを売り崩せるチャンスだぞ」と矛先をスペインに向け始めたのです。

整理します。

欧州金融安定化取極(EFSF)の問題点は、それが欧州憲法の拘束力に依拠しない、「非立憲的な約束」だという点にあります。(欧州憲法は各国のレファレンダムで否決され、採択されませんでした。それでリスボン条約というブリュッセルの官僚達が策定した合意をもって憲法の代わりにしているのです)

つまり国家の予算策定権は未だしっかりと各国の議会(たとえばアイルランド議会)にあるわけで、それらの国の議会がゴタゴタに紛糾して何も決まらなくなってしまえば、その国家主権を無視してEUがルールを押しつけることは違憲だし、主権侵害です。

EUが鉄鋼の生産調整のためのカルテルをルーツとしており、こんにちでも投票箱に依らない超国家組織である事実をFXをトレードする投資家は片時も忘れてはいけません。