アイルランド危機がついにスペインに伝染する兆候を見せ始めています。

スペインとドイツのソブリン・スプレッド(国債の利回り格差)は昨日0.30%拡大し2.36%となりました。これはユーロが導入されて以来、過去最大です。

スペインは一見するとギリシャやアイルランドよりずっと安定しているように見えます。

例えば政府負債のGDPに占める比率は53.2%であり、ユーロ圏の平均である78.7%よりずっと低いです。

今年の政府負債の借り換えニーズは768億ユーロで、年末時点での国債発行残高は5535億ユーロと予想されています。今年の借り換えのうち86%が既に完了しており、入札の平均ビット・ツー・カバー・レシオは2.1倍で、これは過去3年の平均よりも少し良い数字です。

スペイン国債の外人保有比率は45.5%です。

外人比率の内訳は次のグラフのようになっています。
spain bond


しかしこれだけを見てスペインは安心だと早とちりすることはできません。

なぜなら政府の借り入れは多くないけどれ、民間企業の借り入れを含めると借り入れは膨大になるからです。

さらにスペインの抱える問題は政府の財政収支というよりも不動産バブルにあるのです。その意味では不動産バブルがはじけて「ドカ貧」になったアイルランドと似ています。

スペインの住宅価格指数は2008年のピークからこれまでに-15.3%となっており、政府の予想では年末までに-20.1%まで下がると見られています。

住宅完工高は2007年のピークの75万戸から今年は20万戸に落ち込む見込みです。不動産セクターが雇用創造の原動力だったため、住宅建設活動の低迷は失業率の増加を招いています。

現在のスペインの失業率は20%であり、若者の失業率は40%を超えています。

政府の財政赤字対GDP比率は9.3%です。

スペインの銀行セクターは国際的にも名前の知れた、サンタンデールやバンコ・ビルバオ・ビスカヤなどの大手銀行と無数の零細な貯蓄銀行に二分されます。

このうち貯蓄銀行は不動産貸付へのエクスポージャーが高いです。さらにこれらの貯蓄銀行は資本市場からの資金調達がしにくく将来ファンディングの問題に直面する危険性が高いです。

また1980年代のアメリカのS&L(セービングス&ローンズ)危機と同様に、従来の小口預金を住宅関連の貸付に回すというシンプルなビジネス・モデルから最近はどんどん資産も負債も複雑、高度化しており、人材が追い付いていないという問題があります。

さらにこれらの零細な貯蓄銀行の取締役会は政治家などとのつながりが深く、コーポレート・ガバナンスの面でかなり遅れています。