
僕が駆け出しの頃、僕のメンター(師匠)の役を買って出たのは株式本部長のジョンでした。
ジョンは「金魚鉢(fish bowl)」と呼ばれるガラス張りの個室も持っていたけど、大部分の時間はトレーディング・デスクで過ごしました。
右も左もわからない新米の日本人にみっちり稽古をつけるため、ジョンは自らの席を僕の隣に移しました。
こうやってジョンのレッスンは始まったのです。
アメリカの株式市場のこと、証券会社の仕組みのこと、トレーディングのこと、経済のこと、、、それらの全てを彼は教えてくれました。
ジョンはもともとセスナなどの自家用飛行機のセールスマンで自らも小型飛行機を操縦したり、ヘリコプターを分解、整備したりすることが出来ましたが、その後、証券マンに転身し、ベア・スターンズからCJローレンスへと渡り歩きました。
CJローレンスはエド・ハイマンという有名なエコノミストの在籍した中堅証券です。
ジョンはエドとも仕事をし、自分の名前を冠した「モロサニ・インデックス」という経済指標を考案したりしました。
ジョンの客はUSトラストやタイガー・ファンドやソロス・ファンドでした。
証券会社では先ず電話の取り方から勉強しなければいけません。ジョンが立席しているときジョンの電話をカバーするのは僕の役目です。
僕:「はい、ジョンのラインです」
電話の相手:「ジョン、居る?」
僕:「はい、トレーディング・ルームのどこかだとおもいます。失礼ですがどなた様でしょう?」
電話の相手:「スタンだ」
僕は立ちあがるとトレーディング・ルームの反対側に居るジョンに向かってありったけの声をしぼって叫びます:「Johhhhhhhhhhhhhhhn! It’s Stan on Line Two.」
僕はジョンがちゃんとピックアップするかどうかを確かめるため、ミュート・ボタンを押したまま、2人の会話を傍受するわけです。
スタンというのはスタンレー・ドラッケンミラーで、ソロス・ファンドの実際の采配を任されていた有名なファンドマネージャーですが、入社早々の僕には彼がそんな重要人物だとは知る由もありませんでした。
「勉強になるから、僕が客と話をするのをそのまま聞いていなさい」
ジョンはいつもそう言ってこの「盗聴」を奨励しました。
でもハッキリ言って彼らが何を話しているのかは全くもってチンプンカンプンでした。
彼らの会話が終わると僕はジョンに:「さっきのスタンさんとの会話ですけど、○○って、何ですか?」という風に質問するわけです。
そうやって1年もするとだんだんいろいろなことが呑み込めてきました。
ソロス・ファンドのようなグローバル・マクロ戦略を得意とするヘッジファンドの特徴は「おれはバリュー投資家だ」とか「おれはグロース投資家だ」という風に自分の投資スタイルを最初から決めてかからないという点です。
そうではなくて、既存の価値観や定見が崩れそうになっている場所をすばやく察知して、変化のカタリスト(触媒)に自らがなってゆく、、、これこそが成功するグローバル・マクロ・マネージャーのアプローチなのです。
世の中が安定してゲームのルールが変わらないときはグローバル・マクロ・ファンドは「日照り続き」ということで儲けるチャンスは少ないです。
でも世の中の枠組みが揺らぎ始めたら、、、グローバル・マクロのヘッジファンドの稼ぎ時が到来するわけです。
今のヨーロッパはまさにそういう変化の瞬間を迎えようとしています。
ジョンはもともとセスナなどの自家用飛行機のセールスマンで自らも小型飛行機を操縦したり、ヘリコプターを分解、整備したりすることが出来ましたが、その後、証券マンに転身し、ベア・スターンズからCJローレンスへと渡り歩きました。
CJローレンスはエド・ハイマンという有名なエコノミストの在籍した中堅証券です。
ジョンはエドとも仕事をし、自分の名前を冠した「モロサニ・インデックス」という経済指標を考案したりしました。
ジョンの客はUSトラストやタイガー・ファンドやソロス・ファンドでした。
証券会社では先ず電話の取り方から勉強しなければいけません。ジョンが立席しているときジョンの電話をカバーするのは僕の役目です。
僕:「はい、ジョンのラインです」
電話の相手:「ジョン、居る?」
僕:「はい、トレーディング・ルームのどこかだとおもいます。失礼ですがどなた様でしょう?」
電話の相手:「スタンだ」
僕は立ちあがるとトレーディング・ルームの反対側に居るジョンに向かってありったけの声をしぼって叫びます:「Johhhhhhhhhhhhhhhn! It’s Stan on Line Two.」
僕はジョンがちゃんとピックアップするかどうかを確かめるため、ミュート・ボタンを押したまま、2人の会話を傍受するわけです。
スタンというのはスタンレー・ドラッケンミラーで、ソロス・ファンドの実際の采配を任されていた有名なファンドマネージャーですが、入社早々の僕には彼がそんな重要人物だとは知る由もありませんでした。
「勉強になるから、僕が客と話をするのをそのまま聞いていなさい」
ジョンはいつもそう言ってこの「盗聴」を奨励しました。
でもハッキリ言って彼らが何を話しているのかは全くもってチンプンカンプンでした。
彼らの会話が終わると僕はジョンに:「さっきのスタンさんとの会話ですけど、○○って、何ですか?」という風に質問するわけです。
そうやって1年もするとだんだんいろいろなことが呑み込めてきました。
ソロス・ファンドのようなグローバル・マクロ戦略を得意とするヘッジファンドの特徴は「おれはバリュー投資家だ」とか「おれはグロース投資家だ」という風に自分の投資スタイルを最初から決めてかからないという点です。
そうではなくて、既存の価値観や定見が崩れそうになっている場所をすばやく察知して、変化のカタリスト(触媒)に自らがなってゆく、、、これこそが成功するグローバル・マクロ・マネージャーのアプローチなのです。
世の中が安定してゲームのルールが変わらないときはグローバル・マクロ・ファンドは「日照り続き」ということで儲けるチャンスは少ないです。
でも世の中の枠組みが揺らぎ始めたら、、、グローバル・マクロのヘッジファンドの稼ぎ時が到来するわけです。
今のヨーロッパはまさにそういう変化の瞬間を迎えようとしています。