蟻族とは中国の地方の大学を卒業して職を求めて北京などの大都会へ出てきたけれど良い職に就けない若者たちのことを指します。

中国では一人っ子政策があるので親は一人の子供に大いに期待をかけ、教育費を惜しみません。

親としては「自分は大学には行かなかったけれど、子供には大学卒の学歴を持たせたい、、、」そういう熱い思いで育てるわけです。

親の期待を担い、受験戦争を勝ち抜き、大学を卒業していざ都会に出てきた若者には、しかし厳しい現実が待ち受けています。

ニューヨーク・タイムズの蟻族の生態に関する記事によると中国政府の大学教育奨励政策により大卒の肩書を持つ若者は1998年には年間83万人創出されていたのが今日では年間600万人へと激増したのです。


これだけ一度に供給が増えるといくら中国経済が好調で、高学歴の人材が求められていると言っても需要と供給のバランスは崩れるに決まっています。

その結果、中国では学歴は無いけれど手に職のある建設労働者などの給与は2003年から2009年にかけて80%も増えましたが、大学卒の給与は横ばいであり、インフレを考慮に入れると実際は減っているという現象が起きました。

(ちょっと脱線すると高学歴より職人さんの方が引く手あまたになる現象は典型的なバブル末期の現象であり、最近では2年ほど前までスペインで大学をドロップアウトしてソーラー・パネルを据え付ける労働者になる若者などが続出した例があります。僕の住んでいるサンフランシスコ郊外でもサブプライム・バブルの頃は大工さん達は半導体の設計をやっているエンジニアより高給取りでした。)

親の期待を一身に担って都会に出てきた中国の若者達は、そこで初めて自分の学歴の価値が暴落していることに気付きます。過保護に育てられてきた若者たちの夢は挫かれるわけです。

また都会ではコネがなければ良い仕事にありつけないし、地方出身者はそもそもコネがない上に戸籍制度の関係で政府の供給する公営住宅には入居資格がありません。

そういう八方ふさがりの状況の中で中国の若者たちは健気に頑張っているわけです。

フランスの政治思想家、アレクシス・ド・トクヴィル曰く「革命が起きかねない最も危ない瞬間というのは人民の貧しさが極限に達する時ではない。むしろ物事が良くなり、人民が夢を抱いた時、その希望が打ち砕かれた時こそ危ない。」

中国の政府のエリート達はとても勉強しているのでトクヴィルの警鐘もよくわきまえています。だからこそ少々の富の破壊(destruction of capital)が起こっても不動産の価格は下げようとしているわけです。