こんなぺらっ紙数枚の会社定款変更で9.5億ドルもの資金調達が出来る世の中ですから、アホらしくて公募増資なんてやってられないスよねぇ?


Groupon's Amended Certificate of Incorporation

上はGrouponがデラウエア州に提出した会社定款変更届です。
もちろんこれを見ただけでは数字的な事は一切わかりません。

でもプライベート・ラウンド(私募)では投資家はVCなどのプロなので情報開示は詳細である必要はありません。

問題はFacebookやGrouponといった企業は数千人以上の社員を既に抱えており、彼らに対してはストックオプションなどのカタチで未公開株が賦与されている点です。

もちろんストックオプションを与えること自体は違法ではありません。でも通常の「待ち時間」である5年を過ぎれば、ストックオプションはべスティング(=本人のものになること→それは転売可能になることを意味する)します。

すると起業して間もないGrouponはともかく、Facebookではもう5年を過ぎているので貰ったストックオプションを転売したいという社員が続々出てきてもおかしくありません。

それらの株はSecondMarketのような私設電子市場で売買されます。

このような企業の内部者が特別な経路で取得した自社株は転売する際にもいろいろな制約があり、持ち主個人に関する書類を整える必要があります。

きちんとした書類整備がなされた上で、私設電子市場で売り買いが突き合わされるのなら良いですけど、これらの私設電子市場には新聞の三行広告程度の告知で売り手の意思が示され、いい加減な売買が横行していると聞きます。

これは未公開株詐欺などの犯罪の温床となる可能性を持っています。

アメリカでは1929年の大暴落の前に証券法の未整備からいろいろな問題が出ました。

そこで1930年代の証券改革に際してはフランクリン・D・ルーズベルト大統領は当時の有名な仕手筋、ジョセフ・ケネディをSECの長官に据えました。

この人事にはウォール街や米国民から轟々たる非難の声が上がりました。なぜならジョセフ・ケネディ本人が「盗人」的な目で世間から見られていたからです。ケネディはいろいろなプール(=投資家の資金を集めて個別株を買い上がる目的のファンド)を組成し、荒稼ぎした実績があります。

ルーズベルト大統領はこの批判を「どこ吹く風」でサラッと無視しました。

「泥棒をつかまえるのには、泥棒を使うのが一番さ」

実はジョセフ・ケネディはいろいろな事業や仕手戦でお金はしこたま蓄えていましたが、政治的な名声が一番欲しかったのです。

JPK_Photo

これはお金では手に入れることはできません。だからSEC長官の仕事はきわめて真面目に勤め上げる決心をしていました。

ルーズベルトはそういうケネディの渇望というか弱みを良く見抜いていたのです。

ケネディがSEC長官に着任してからの活躍はウォール街を「あっ」と言わせました。そしてぐいぐいポイントに切りこんでくるケネディのやり口に震撼したのです。

たとえばケネディは:

1. すべての上場証券はSECに登録し、財務諸表を提出すること
2. すべての証券外務員は登録する必要があり、過去の係争など都合の悪い事を開示すること

などを決め、即刻実行に移しました。

現在では企業がIPOする前に書類をSECに提出するのは当たり前のことですが、ケネディ以前は上場企業の業績内容などを一律に、おなじ開示基準で比較することすらできなかったのです。

ウォーレン・バフェットの師匠、ベンジャミン・グラハムの「グラハム・ドット・セオリー」もこの開示規定が存在しなければ「絵に描いた餅」に過ぎなかったわけです。

そういうわけでこの規則は米国の証券市場の飛躍にとても貢献しました。

また外務員登録制度は守らなければウォール街から追放されることを意味するので、反対派をいっぺんに黙らせてしまいました。

今回のFacebook未公開株に対する米国証券取引委員会の実態調査は:

1.ディスクロージャー
2.ライセンスを持った証券マンが取引に介在すること

の両方の面でそれらの取引が「落第」している可能性があるという点で重要です。

ここで上場前に「前科」を作ると本来、IPOできるものも出来なくなってしまう、、、


そうなればこれはもうパニックですよ。



ドットコム・バブルを振り返って、(ここが最も難しいな、、、)と思ったのは技術評価やバリュエーションではありませんでした。

最もむずかしかったのは「足るを知る」ということです。