今回のチュニジアの革命はアラブの為政者たちに1979年のイスラム革命に匹敵するショックを与えています。

なぜジャスミン革命(=チュニジアの革命は同国の国花がジャスミンであることからそう呼ばれています)は彼らを震撼させているのでしょうか?

それは今回のデモの盛り上がりはこれまでの中東にありがちなパターンとは全く異なる、意表を突いた展開だったからです。

中東の人たちはユダヤ教と回教との反目、スンニ派とシーア派との対立、ペルシャ人とアラブ人の相互不信などには慣れっこになっています。

ところが今回のジャスミン革命は宗教とは何の関係もありませんでした。


今回の蜂起は慢性的な失業や高インフレや貧富の差が激しい事など経済的問題ならびに国民の声の国政への反映の欠如が引き金となったのです。

その意味では大きな若年人口を抱えるエジプトやサウジアラビアも同様の問題を抱えています。

アメリカは経済的な利害や歴史的な行きがかり上、独裁的な政権でもアメリカの友人として支持に回ることがしばしばあります。

たとえばサウジアラビアのサウド家はワッハービズムという人権などの見地からは極めて後進的な宗派ですがサウジ・アラムコなどの石油をめぐる共同事業に際してサウジが親米的な態度を取る限り、アメリカは「見て見ぬフリ」をしてきたわけです。

チュニジアのベンアリ大統領もそういう「無害な独裁者」としてアメリカは支援してきました。

だから金曜日の夜まではヒラリー・クリントン国務長官はいちおうベンアリ政権を支持する発言をしていました。

しかし今回の騒動が草の根的な盛り上がりによって持ち上がったものである以上、デモクラシーの擁護者を自任するオバマ大統領はどうしてもベンアリ政権に肩入れを続けることは出来なくなったのです。

そこでオバマ大統領は「チュニジアの国民の勇気と尊厳に拍手する」という一言でベンアリをお払い箱にしました。

このアメリカの寝返りが親米派アラブ諸国の為政者に与えたショックは大きかったです。

どんなに米国への忠誠を誓っていても庶民のデモクラシーへの渇望が噴出すればオバマ大統領は長年の外交的立場を翻し、為政者の梯子を外すという事がハッキリしたのです。

サウジアラビアやエジプトは「アメリカの後ろ盾を得ている」という理由だけでリーダーがクレディビリティを維持しています。だからこれらの国の政情は皆が考えているほど安定的ではないのです。

(なにか仕掛けるならオバマが大統領をやっている間の方が良い)

そういうソロバンが反政府運動の運動家たちに広がり始めているというわけ。