相場の世界では「天災は買いだ」といわれますが、現在のオーストラリアは正しくこれに当てはまると思います。

オーストラリア東北部と東南部を襲った豪雨による洪水で同国は今、結構たいへんな事になっています。

このため豪ドルも神経質な動きになっています。

洪水はまだしばらく続きそうだし後片付けも大変な作業になると思います。

でもこれでオーストラリアという国が駄目になるという事ではありません。

オーストラリア経済のファンダメンタルズは強いし、今後の成長のシナリオは描きやすいです。

またオーストラリアと日本の経済のファンダメンタルズには大きな格差があるので、両国の金利差はチョッとの事では縮まらないと思います。

それは豪ドルをロングするというストラテジーが基本的には正解だという事を意味すると思います。

そこで目先的な相場のすべった、ころんだはチョッと横にどけておいて今日は向こう2年程度の長期でオーストラリア経済のファンダメンタルズを考えてみたいと思います。

先ずオーストラリア経済は「一体、今後どこから成長が来るのか?」という事がハッキリしています。

それは中国への資源、素材の輸出から来ます。

下はオーストラリアの輸出先がどう変遷してゆくかを示したグラフですが中国の存在感がぐんぐん上がっていることがわかると思います。
オーストラリア

中国は主に鉄鉱石や石炭をオーストラリアから買い付けています。


オーストラリアは今、ゴルゴンという天然ガス田を開発中であり、これが稼働しはじめるとLNG(液化天然ガス)の輸出も増える見込みです。

オーストラリアは中国に比較的近いだけでなく、インドからも近いです。従って今後インドでもインフラストラクチャへの投資が盛んになればそちらへの輸出も拡大することが考えられます。

このような事からオーストラリア経済は先進国の平均的なGDP成長率よりも幾分早いペースで中長期に渡ってGDPを伸ばしてゆくと考えられています。

2011年のGDP成長率は大体3%は確保できるものと思われます。

オーストラリア政府はリーマン・ショックが起こる前は6年連続で財政黒字を達成しました。大体、GDPに対して1~1.75%程度の黒字です。

この黒字のおかげで同国は財政赤字を一掃しました。

だからリーマン・ショックが起きた時はすぐに財政出動する余裕に恵まれていたのです。

実際、リーマン・ショックが起きたとき、豪政府はすぐにGDPの4.3%に匹敵する財政出動を行いました。この景気刺激プログラムの発表は他の先進国各国より素早いアクションでした。

いまはむしろこの景気刺激プログラムをどう終わらせるか?ということを政府は考えています。
実際、今後は景気刺激プログラムを絞り込み、2012年にはまた財政黒字に戻り、2014年頃までには再びGDPの1%程度の財政黒字を安定的に達成できる体質に戻ると思われます。

一方、金利面ではリーマン・ショックが起きた時、バンク・オブ・オーストラリアは金利を7.25%から3%へと素早く切り下げました。現在は再び利上げモードに入っています。(なお危機前の長期金利は約6.5%、現在は約5%くらいです。)

オーストラリアは家計部門の負債比率が高く、住宅ローンの大半は変動金利のローンですからこの利下げは消費部門を支援するためには適切な措置だったと思います。

オーストラリアは政府の外部負債が少ないです。ネットベースではGDPの5%程度、グロス・ベースでは25%で、これは先進国最低です。

オーストラリアは鉄鉱石や石炭の輸出が絶好調なのに経常収支は大幅な赤字(GDP比-6%)です。

これについては首をかしげる人もいるかとおもいますが、この点はカンタンに説明がつきます。

同国ではいま先述のゴルゴンという巨大天然ガス田の先行投資の真っ最中で2009年から2014年までの間に430億ドルもの投資をします。その多くはプロセス機器類であり、海外からの輸入になります。これが経常赤字の約半分に相当するわけです。

ゴルゴン・プロジェクトが完成すれば、これまでの赤字は逆にLNGの輸出によりプラスに転じるわけで、この赤字部分は全く心配するに及ばないと思います。

オーストラリアはアメリカやイギリスのように不健全な銀行セクターというお荷物もありません。

オーストラリア政府は先見の明があり、「大きくて潰せない」メガバングが登場しないように同国の4大銀行の合併は許しませんでした。

また同国の銀行はヘンなデリバティブなどには比較的手をだしておらず、資産の内容は専ら住宅ローンや商業貸付といったシンプルな商品です。一方、ファンディング・サイドは主に預金です。

オーストラリアが今抱えている問題は「失業率が低すぎる」という、羨ましい悩みです。

リーマン・ショックの前は4.2%くらいあった賃金インフレは現在のところ2.5%程度まで下がってきています。

しかし今後再び鉱業セクターがブームになると賃金インフレが問題になる可能性は否定できません。

因みに現在の消費者物価指数は+3%程度で推移しています。

最後に豪ドルですが、究極的にはコモディティ価格に連動していると言って良いと思います。ですから気をつけるべきはオーストラリア国内での経済の変調ではなく、中国のスローダウンなどのシナリオです。