このような報道を待っていたのですが、ニューズウイークのジョン・バリーが「エジプト危機に対するホワイトハウスの対応(Inside the White House’s Egypt Scramble)」という記事を書いています。

とても臨場感溢れる素晴らしい記事なので一部紹介します。

カイロでの反政府デモが激しさを増しはじめてから、(ホワイトハウス危機管理チームは)3日間、ほとんどデスクを離れていない。

オバマ政権への政策提言をする役目を司る、彼らの上司の大きな部屋に陣取ったスタッフは今回のエジプト危機に際して米国政府がどう立ち回るべきかを刻々と微調整している。

部屋には2つのテレビが置かれており、そのひとつはCNNを、もうひとつはアル・ジャジーラを映し出している。

誰かが電子レンジでポップコーンを膨らませている。昔ならピザの配達を頼むところなのだか、9・11以降、ホワイトハウスの警備は厳重になっているので今ではテイクアウトすら頼めないのだ。

危機管理室のムードは高揚している。

若し危機管理チームの間で「賭け」をしたならば「ムバラクはリンドン・ジョンソン大統領がしたように次の選挙には立候補しないと宣言する」という方に賭けるスタッフの方が多かっただろう。

しかしテレビがムバラク大統領のスピーチを映し出し、ムバラクが頑として大統領の座を譲らない様子を見せると危機管理チームの楽観的なムードは消えた。

「うーん」

スタッフの間からは唸り声が聞こえる。
頭を振って(信じられない)というしぐさをする者も居る。

(これではカイロの市民を納得させるには十分じゃない、、、)

ムバラクの演説が終わると
危機管理チームのひとりが呟いた、、、「さあ、われわれは一体、どうすればいいんだ?」



(中略)

長い討議の果てに次ぎの事が決まった。

オバマ大統領は今、ムバラク大統領と直接口をきくべきではない。

それは最後の最後までとっておこう。第一、いまオバマがムバラクと口をきくとオバマがムバラクに大統領をやめるべきか、それともつづけるべきか意見せざるをえなくなってしまう。

オバマの立場としては「ノー」とは言えない。
その一方でムバラクを支持すれば、エジプトのメディアは一瞬のうちに「アメリカがムバラク支持に回った!」ということをメディアで流すだろう。(この記事をホワイトハウスの事前審査担当者に見せたら、、、「いまコメントすることはない」という返事が来た。)

そこでオバマ政権はカイロのアメリカ大使館を通じてムバラクのアドバイザーにコンタクトした。そしてその他のアラブ諸国のリーダーも根回し候補としてリストアップされた。

いまアラブ諸国はいずこもエジプトで起きていることを戦々恐々としながら見守っている。テレビが反政府デモを映し出せば映し出すほど、同様のデモが自分の国でも勃発するリスクは高まるのだ。

オバマ政権のアラブ諸国のリーダー達へのメッセージはハッキリしている。「あんたらでムバラクに譲歩するよう説得しなさい。ボヤボヤしているとあなたの方へも火の粉が飛びますよ。」

一方、ペンタゴン(米国国防省)を訪れていたエジプト軍のサミ・ハフェーズ・エナン参謀総長は早々にミーティングを切り上げて混乱する母国への帰途についた。ペンタゴンのスタップは「エジプトの事態が流血事件にならないよう平和に解決することを祈ります」という意味深な言葉で参謀総長を送った。米軍はエジプト軍とはたいへん親密な関係を長年維持しており、エジプト軍は毎年13億ドルの資金援助をアメリカから受けている。だからこのメッセージが何を意味しているのかはエジプト側には明快だ。
(=群衆に手を出したら、アメリカはエジプト軍への援助は断つ)

金曜日の午後、クリントン国務長官、バイデン副大統領、ドニロン国家安全保障顧問は「いまこそオバマはムバラクと連絡をとるべき時が来た」と結論付けた。

ムバラクがエジプト国民に向けて行った演説が、アメリカが動き出すきっかけを提供したのだ。

オバマ政権は「これだけはムバラクにちゃんとやって欲しい」という条件をハッキリ明示した。

「まずエジプトの国民は世界共通の、普遍的な権利を有しているのでそれを踏みにじらないこと。」

「アメリカは若しそれらの市民の普遍的な権利が蹂躙された場合は彼らを擁護するために立ち上がること。」

「ムバラクは国民に対する演説の中でデモクラシーを押し進め経済的機会を向上することを約束したが、それをちゃんと有言実行するかどうかアメリカは見守る。そして具体的にそれらを実行するためのステップを踏むかどうかを見極める。それを実現するためにはアメリカはエジプトのどんな人たちとも(all quarters)ちからを合わせて頑張るつもりだ。」

特にこの「アメリカはエジプトのどんな人たちともちからを合わせて」という部分は、「必要であればムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)とも協力する」と言う意味なので、きわめて重要な外交政策のシフトである。