またデカいニュースが入電しました。

ウォールストリート・ジャーナルのジェイ・ソロモンとビル・スピンドルがダマスカスでシリアのバッシャール・アル・アサド大統領にインタビューしました。

その中でアサド大統領は「エジプト、チュニジア、イエメンなどで起きている反政府デモは中東に新しい時代が到来していることを示唆している。アラブのリーダー達は庶民の政治的、経済的上昇志向にもっと理解を示すべきだ」と語りました。

実際、アサド大統領は今年から地方選挙を導入すると語っています。

「若し庶民の機微を未然に察知できなければ、エジプトやチュニジアのようなことになる」


この発言がシリアの大統領から出ていることに僕は軽い「めまい」さえ覚えます。

もちろん現在シリアの大統領をつとめているバッシャール・アル・アサドはどちらかといえば目立たないタイプの「二代目」大統領ですが、バッシャールのお父さん、ハーフィズ・アル・アサド前大統領は中東の独裁者の中でもとりわけ残忍で容赦ない人物でした。

『スターウォーズ』で喩えれば銀河皇帝ダース・シディアスくらい邪悪な独裁者なのです。

ハーフィズ・アル・アサドは世俗的政党であるバース党のリーダーでしたが、回教徒のライバル政党、ムスリム同胞団の手先が彼の暗殺を企てた(アサドは九死に一生を得ました)ことへの報復としてムスリム同胞団の本拠地である古都ハマを焼き討ちしました。

トーマス・フリードマンの名著『From Beirut to Jerusalem』の中にその凄絶な殺戮に関する記述がありますが、フリードマンは死者の数を1万から2.5万人としています。(ウィキペディアでは1.7万から4万人となっています。)
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この事件が起きた直後に僕はクウェートに赴任したのですが(なにか大変な事がシリアで起こった)という異様な雰囲気だけはビンビンに伝わってきたのですが、誰も何も語ろうとしません。ちょうどアウシュビッツの収容所での出来事を誰も語ろうとしないのと同じような感覚なのです。

中東の人たちの心の中にはハーフィズ・アル・アサドの怖さが骨の髄まで染み込んでいるので、息子さんのバシャールが父に比べれば穏健な人であっても警戒を解きません。

シリアはレバノンのハリリ首相の爆殺を裏で手引きしたのではないか?と言われている他、イラン、ハマス、ヒズボラなどとも交流があります。

さて、シリアのリーダーからもこのように「中東の流れが変わりつつある」というコメントが聞かれる重要性はどこにあるのでしょうか?

僕の考えはこうです。

今年、これまでに反政府デモが起こった国は全てアメリカの同盟国でした。しかしシリアはアメリカとは仲が悪いです。だからアメリカの影響でシリアの国民が「デモクラシーかぶれする」ということは無いと思うのです。(むしろ国内的にはアメリカを敵に回すことで大統領の人気の維持はやりやすいのではないでしょうか?)

だからアサド大統領ですら庶民からのデモクラシーの圧力を感じているということは本当に従来のステレオタイプ的な中東観では今、起きている現象を説明できないと思うのです。