現地土曜日にエジプトからヨルダン、ならびにイスラエルへ天然ガスを供給しているパイプラインが爆破されました。

この爆破を実行したのはシナイ半島を徘徊するベドウィン(遊牧民)の一団だと言われています。

アラブには昔から遊牧民の伝統があり、今日でもベドウィンは存在します。彼らは特定の国や土地に対する忠誠というより集団のリーダーに対する忠誠を重視し、群れの掟によって律せられています。

今回の攻撃ではロケット手榴弾などが使われたようです。

パイプラインを運営しているガス会社、イースト・メディタレニアン・ガスは損傷を復旧するため、一時的にパイプラインの圧力をゼロに落とすと発表しています。

これでヨルダンに向かう天然ガスは一時的にせよ完全に停止することになりました。

ヨルダンにとってはこのパイプラインが唯一の供給ルートです。

イスラエルに対する天然ガスの配給もこれにより一時的にストップします。


■ ■ ■

ここからは僕の憶測です。

先ずシナイ半島はエジプトとイスラエルの和平協定の下で「非武装地帯」となっています。
つまりイスラエル軍、エジプト軍は駐屯できないのです。

その代わり、シナイ半島の治安維持はエジプトの警察が当たってきました。

しかし以前に書いたように今回のエジプト革命の行きがかりで、内務大臣がムバラク大統領と衝突し、立腹してエジプト全土から警察権力を引き揚げました。

これはシナイ半島でも同様の措置が取られました。

するとこれまで警備に当たっていた警察の姿が見えなくなったので、遊牧民は大っぴらに「荒稼ぎ」出来るようになったのです。

かれらは武器弾薬の密輸や貿易ルートの用心棒を務めることなどで生計を立てています。しかしベドウィンのグループ内部でもいろいろな抗争があると思います。

なぜベドウィンがパイプラインを攻撃したのかはわからないけど、ベドウィンはエジプト革命そのものに賛成、ないし反対ということではなく、たぶん警察権力が衰退した隙を狙って日頃の怨念を晴らす行為に出たのだと思います。

ガスが全部止まるとヨルダンにとってはかなり辛いと思います。

しかしパイプラインの復旧は早ければ数日程度で出来るので、問題が長期化することは無いと思います。

またパイプラインは顧客と供給元が完全に固定しているので、この事件は理屈の上では世界の石油や天然ガスの市況には影響を与えないはずです。

しかしニュースの受け手としては「地政学リスクが高まった」と判断する投資家も居るかも知れません。

PS: 以前書いたシナイ半島へのエジプト軍派兵はシナイ半島南端のリゾート地への派兵ですから、今回事件が起きた場所(イスラエルとの国境に近いところだと思います)とはぜんぜん方向が逆です。だからエジプト軍は治安維持のためにパイプラインの方へ向かうということは無いと思うし、それはイスラエルも歓迎しないでしょう。

しかしそもそも非武装地帯であるはずのシナイ半島に軍隊が動き回っており、協定がなし崩し的に形骸化している点についてはイスラエル内でも不安の声があります。