今日フランス軍がリビアの戦車を空爆しました。それに続きアメリカやイギリスが艦船からトマホーク・ミサイル110発がリビアの主要軍事施設に撃ち込まれました。

中東情勢が急展開していることに戸惑いを覚える読者も多いと思いますので、なぜ戦争になっているのかを整理したいと思います。

【反政府運動】
事のきっかけはリビアの近隣のチュニジアやエジプトで起きた革命です。

それらの民主主義革命に触発されたリビアの人たちもより大きな政治的発言権を求めて民主化運動をはじめました。

しかしエジプトなどでは非暴力的な運動だったのが、リビアの反政府運動はどんどんエスカレートし、内戦状態になりました。

反政府派は主にリビアのベンガジなどを中心とする地域を制圧し、為政者のカダフィ大佐の政権側は西リビアのトリポリに立てこもるという構図になったのです。

カダフィ政権は戦車などの軍事力を使って反政府派に無差別攻撃を始めました。

【アラブ連盟】
アラブ連盟はアラブ諸国を中心とした地域機構です。

アラブ連盟は今回のリビア内戦を人道的・戦略的見地から「悲劇だ」と捉え、無差別攻撃に反対する決議を採択しました。アラブ連盟のメンバー各国がこの決議に賛成した理由はレス・ゲルブCFR最高顧問の考えでは「同じアラブ人としてなにもせずに見て見ないフリをするのはカッコ悪いから」という消極的な理由によります。

もとよりアラブ連盟メンバー各国は自国の軍隊をリビアに派兵して内戦の仲裁をするつもりはサラサラ無かったわけで、「それはフランスやイギリスがやるだろう」と他人任せの態度をとったわけです。


【国連安全保障理事会での決議】
さて、リビアに対して飛行禁止区域履行を実施するかは次に国連の安全保障理事会にかけられました。

安全保障理事会の採決では5つの国(ロシア、中国、ドイツ、インド、ブラジル)が棄権したもののロシア、中国という2つの常任理事国が拒否権を発動できるのに、敢えて拒否権を発動しなかったことでこの決議が採択されてしまったのです。

「当然、ロシアや中国は拒否権を発動するだろう」と考えていた国連加盟諸国は「番狂わせ」で安全保障理事会が飛行禁止区域決議が採択されたのには少々驚いたと思います。

このように「なにもしないのはカッコ悪いから」とか「どうせ拒否権だろう」という消極的な支持が「あれよあれよ」という間に「リビアを制裁すべし」という結論に化けてしまったのです。

【米国の態度】
米国ではネオコンと呼ばれる政策担当エキスパートの一派、ならびにリベラル人道主義者のグループという、普段なら「油と水」のような取り合わせの2つのグループがどうしたわけか「リビアへの介入は人道上、どうしても必要だ」という点で意見一致し、広く米国民一般の世論の盛り上がりは全く無いままに作戦への参加という方向に急速に傾いたのです。

【欧州各国の利害】
リビアは地中海を隔てて欧州各国とはすぐ隣なので実際の飛行禁止区域の履行(=それは平易な言葉で言い直せばカダフィの空軍や陸軍が自由にリビア国内を動き回ることを出来なくすることを意味するのでレーダーや空軍基地の爆撃を意味します)はフランスやイギリスやイタリアの仕事ということになります。安全保障理事会の決議が出た以上、カダフィ大佐が国連の勧告を無視し、一般の市民を殺戮すればお灸をすえないわけにはゆきません。

戦争がはじまったのは大体、以上のような経緯によります。

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リビア空爆は1999年のNATO軍コソボ空爆と同類
PS:東リビアと西リビアの位置関係が逆になっているというご指摘がありました。ありがとうございます。訂正しておきました。