フィナンシャル・タイムズのブログによるとブラジル政府は同国きっての優良株であり、民営化成功の典型例であるバーレ(ティッカー:VALE)の人事に口出ししているようです。
VALE

現在のバーレのCEOはロジャー・アグネリですが、彼はブラジル政府とウマが合わず、政府から煙たがられています。

アグネリは短気なことに加えてブラジルの政界に沢山の敵を作ってしまったそうです。

このためブラジル政府はアグネリをCEOから追放する方向で動き始めています。

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さて、ここからは僕の考えですが今回のバーレの一件は投資家の立場からすると少し見ていてハラハラするものがあります。

なぜならブラジルは1960年代の軍事政権の頃に政府がなんでもかんでもビジネスに首を突っ込む悪いクセを持ちはじめ、これがお役所仕事の蔓延と非効率を招いたからです。

ラテンアメリカ債務危機を経た後、1990年頃から政府がビジネスに口を出さない方針に転換し、それがこんにちのブラジル企業の飛躍の一因になりました。

しかし1年半くらい前から再び政府が民間のビジネスに口出しするようになりはじめています。

その一例はペトロブラスの「再国有化(=過半数株式を政府が占めるという意味で)」です。

ペトロブラスはリオデジャネイロ沖の大深水油田、トゥピ(→現在は前大統領の名前を取ってルラ油田と改名された)を発見した後、ブラジル政府が「この油田の開発は国家戦略上重要だ」という口実で:

1. 外国企業を締め出した
2. 石油掘り出しの際に企業が政府に支払うロイヤリティを国際水準以上に値上げした
3. それからくる増収で政府のペトロブラス持ち株比率を増やした

ということを行いました。大深水油田開発には莫大な先行投資が必要なのですが、その費用の捻出の大部分は外部の投資家(世界の株主とペトロブラス債を購入した機関投資家)が負担しました。政府は将来、入って来るであろうロイヤリティ収入を「前借り」する格好でペトロブラス株の割り当てを受けたのです。

つまり株主からすれば株主利益の希釈化(ダイリューション)とロイヤリティ引き上げによる採算性の低下という二重苦を押し付けられたわけです。

いまブラジル政府はバーレに対して「鉄鉱石を中国に輸出してばかりいないで、安く国内の製鉄所に供給しろ」と迫っています。

でも元をただせば中国貿易あってのブラジル経済であり、バーレが出世株になったのも中国のおかげです。

ブラジル政府のやっていることは間違っていると思います。