僕は古い人間なのでテクノロジーと聞くとどうしてもノートパソコンなどをイメージしてしまいます。

しかし今は人間とハイテクの接し方がどんどん多様化しており、別にパソコンの前に座ったときだけが我々がコンピュータと対峙している時ではなくなっています。

具体的にはスマートフォンやタブレットPC、クルマの中に搭載されたさまざまなエレクトロニクスなどがその例です。

このようなコンピューティングの多様化、ユビキタス化は今後も続くと思われます。

そうした巨視的なトレンドの恩恵を最も蒙る半導体メーカーのひとつが台湾セミコンダクター(ティッカー:TSM)です。

台湾セミコンダクターは所謂、ファウンドリー、つまり半導体製造の下請けです。

しかし半導体デザイン会社と、そのデザインに基づいて半導体を制作するファウンドリーとの関係はこれまでの発注者、下請という単純な関係からかなり変質してきていると思います。

これには2つの理由があります。

まず半導体の微細化が進むとプロセス技術(=要素技術と言う場合もあります。具体的には成膜技術、リソグラフィ技術、エッチング技術、洗浄技術、検査技術などのフィジカルな生産技術を指します)やインテグレーション技術(=制作工程の統合技術です。具体的にはフローチャートなどを使ってひとつひとつの制作ステップを決めてやるノウハウを指します)などは主に半導体製造装置メーカーとそれを実際に使用するファウンドリーに蓄積されるという点です。


2つ目の理由としてスマートフォンなど軽小短薄なデバイスを実現するためには半導体チップそのものを小さく、しかも複数の機能をひとつのチップの上に焼き込むことでデバイスが使用するチップの個数を減らすということをやらなければいけません。

ひとつのチップにいろいろな機能を盛り込み、あたかもチップ自体がひとつのコンピュータのようになることをシステム・オン・ザ・チップ(SoC)と言います。

その場合、スマートフォンなどの新製品は毎年何十種類、何百種類もの新製品が出るわけですからそれらの全てに関していちいち全てを白紙の状態から回路設計図を引くわけにはゆきません。

そこで自分の製品の競争優位に決定的な差別化をもたらさない汎用的な機能の部分については出来合いのSoCをセル・ライブラリと呼ばれる作り置きされたデザイン集の中から選んで来ることが一般的となっています。

そのセル・ライブラリとプロセス技術の擦り合わせは既に台湾セミコンダクターなどのファウンドリーで実績を積んでいるわけですから、それらの手順は変えないで、そのまま利用されます。

つまり設計ノウハウや量産ノウハウのリサイクル化、カタログ化がファウンドリーを外せない存在にしているのです。

インテルは何から何まで自分でやるという価値観をずっと堅持してきた会社なので、言わば「閉じた」企業です。

従ってSoCなどの流れには上手くついてゆくことはできません。

またパソコンがコンピュータの主流だった時代にはひとつのプロセッサーを大量に制作するという小品種大量生産で良かったわけですが、スマートフォンのような「個性の時代」になると多品種少量生産をしてやらなければいけません。

インテルという会社のメンタリティはいちいち多品種少量生産という価値観とはぶつかり合います。

このような理由からスマートフォンやタブレットPCが主流になる時代にはインテルの売上成長率より台湾セミコンダクターの売上成長率の方が恒常的に高くなるという現象が定着すると思うのです。

両社の2000年以降の一株当り売上高のトレンドを2000年を100としてプロットすると次のグラフのようになります。
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過去10年間のインテルの売上高成長率は年率約5%でした。台湾セミコンダクターのそれは16%でした。

今後の売上成長率を仮にインテル=年率6%、台湾セミコンダクター=年率12%とすると(これは過去の実績に比べるとインテルに甘く、台湾セミコンダクターに辛い想定にしてあります)2022年には台湾セミコンダクターの売上高がインテルのそれを抜くことがわかります。
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僕の言いたいことは台湾セミコンダクターという会社はこのように将来、たいへん重要な企業になると予想されるにもかかわらず、同社の評価は極めて低いということなのです。

現在、台湾セミコンダクターはPERで約11倍で取引されています。

同社の営業マージンは64%、純利益マージンは35%、ROEは27%です。これらはいずれもインテルを上回っています。
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しかもかたやインテルは「ウィンテル・モデル」というこれまでの成功のプラットフォームそのものが脅威に晒されているのに対し、グローバル分業時代、オープン化のトレンドなどは全て台湾セミコンダクターにとって有利なトレンドです。

台湾セミコンダクターの「一強時代」はすぐそこまで迫っています。