今日ゲイン・キャピタル(ティッカー:GCAP)がドイツ銀行のリテールFX(=個人投資家のFX)部門であるdbFXを買収すると発表しました。

買収金額は明らかにされていません。

ゲイン・キャピタルは外国為替証拠金取引業者でFOREX.COMのブランドネームでサービスを展開しています。

一方、ドイツ銀行は機関投資家間での為替取引では世界一の存在です。

ドイツ銀行はそのホールセール(卸売)ビジネスの延長としてdbFXというブランドネームでリテールFXサービスを2006年から開始しました。

dbFXの典型的な顧客は口座残高が10万ドルを超えており、業界平均の2300ドルより遥かに大きいです。またdbFXの預かり残高は3.5億ドル程度ではないかと言われています。


つまりdbFXは事業規模はまだまだ小さいけれど「為替の雄」、ドイツ銀行が自らのブランドネームを冠したリテール事業として、「FXのロールスロイス」的なハイソなイメージを醸し出していたわけです。

さて、今回のdbFXの買収はゲインが宿敵FXCMに対して花嫁泥棒をはたらいたと形容出来ます。

歴史的にdbFXはFXCMのトレーディング・プラットフォームを使用してきました。

その関係でドイツ銀行がdbFXを売却すると決めたとき、この話は最初ビジネス・パートナーであるFXCMに持ち込まれました。

そこにゲインが割り込んできて、より高い値段を提示したのです。

今回、ゲインがdbFXを買収したことでいずれdbFXのトレーディング・プラットフォームはFOREX.COMのForexTrader Proに変更になると思います。

それはFXCMの立場からすると年間約800万ドル相当のdbFXのカスタマー・ビジネス(FXCMの年間手数料の2.3%に相当)がゲインに取られてしまうことを意味します。

これはゲインにとってはリベンジとも言えます。

なぜなら今年のはじめにゲインはちょうど今のFXCMが置かれた立場と同じような境遇を経験したからです。

それはゲインの顧客であったTradeStation(トレードステーション)が「ゲイン・キャピタルのトレーディング・プラットフォームをもう使わない」と宣言したことによります。

このためゲインはTradeStationからのオーダー・フロー(ゲインの売上高の5%に相当)をうしなってしまいました。

そのTradeStationは昨日マネックス証券に買収されると発表しています。

今回、dbFXがゲインにさらわれたのはFXCMにとっては痛かったと思います。なぜならFXCMのIPOロードショウでも「うちはdbFXと特別な関係がある」ということを自慢していたので、それがもうアピールできなくなるからです。

またゲインにとってみるとdbFXを得るということは同社のイメージUPにプラスに働くと思います。

FX業者はつい2週間ほど前の『バロンズ』にかなり批判的な口調の記事を書かれました。

『バロンズ』は「FXトレードは顧客のアトリッション率が15~25%と高い」点を問題にしていました。

しかしこの記事を書いた記者は少しリテールFXを誤解している面があると思います。

なぜならリテールFXでは平均的なトレーダーは1日3回取引します。するとそもそもトレード回数が多いので1回のトレード当たりの消耗率に直すと決して従来型の証券会社と比べてもアトリッションは高いとは言えないのです。

もちろんFXと通常の株式投資や投資信託への投資とでは大きな違いがあります。

FXは絶対リターン(Absolute Return)のゲームであり株式市場のブル相場、ベア相場には無関係です。

だから去年の9月以降のように世界の株式市場がどんどん上昇する局面ではFXは割に合わないように見えます。

またFXはゼロサム・ゲームなので全ての投資家が儲けるということはありえません。

言い方を変えれば、一部の、トレードの上手い投資家だけが利益を独り占めにするタイプの取引対象なのです。

その意味でFXはトレード技巧に基づく(Skill based)投資なのです。

そう言われると(キツイな)と感じるかも知れませんが、普通の株式投資や投資信託のように長期ベア相場が来れば腕前に関係なく全員が「万事休す」になるということもFXの場合には無いのです。