ウォール街では全てが使い捨てダヨ」というエントリが一部の人にウケたので、調子に乗ってウォール街の就活シリーズ(?)を続けます。

今日はギョーカイ関係者の間で「蛇の穴(Snake pit)」と呼ばれていた(=過去形になっているところがミソです)投資銀行について書きます。

最初に断っておくとここで取り上げる特定の投資銀行を僕が嫌っているわけでも、筆誅する気もありません。

ギョーカイに身を置いた人ならわかると思うけど、それぞれの企業のコーポレート・カルチャーはウォール街というジャングルで生き残るための「環境への順応」の過程で醸成されたものであり、「進化の結果」なのです。

きれいごとばかり並べ立てる「自分の手を汚さない」投資銀行も、すすんでドブ浚いみたいなヨゴレ仕事をする投資銀行も、所詮は同じ穴のムジナ。そういう意味では等しく愛される(笑)権利があるのです!



件の「蛇の穴」というニックネームをつけられた会社はリーマン・ブラザーズです。
皆さんご承知の通り、リーマン・ブラザーズはサブプライム危機の過程で潰れました。

「見捨てられた」という解釈をする人も居ます。

リーマンが「蛇の穴」と呼ばれる由縁は社内での抗争、足の引っ張り合いがひどいことによります。そこでは「勝者が全てを奪い去る」式の報償システムになっているわけです。

勝ち組に大きなご褒美を渡すシステムを「神聖なるもの」とし、守り通すやり方は悪平等に慣れっこになっている一部の日本人には到底理解できない価値観かも知れないけど、「喰うか食われるか」のウォール街というジャングルでは「強いリーダーにつこう」という発想は極めて自然です。

つまりリーマンという投資銀行はスタープレーヤー(花形社員)にとってブロードウェイのステージのような活躍場所を提供していたという風にも言えるのです。

そこでは個人が組織より優先します。

ゴールドマンやモルガンに勤めている社員で、デキル奴は必ず一度は「オレがリーマンに転職すると、どうだろう?」という事がアタマをよぎる筈です。なぜならゴールドマンやモルガンは利益の分配に関してリーマンより会社側がウルサイからです。

(稼いでいるのはオレなのに、何でオレの成果を他の連中とシェアする必要があるのだ)

そういう不満を抱いた社員は心が揺れます。

そう書くと、読者のみなさんは(リーマンってのは、なんて利己的な奴ばかりなんだ)と思うかもしれません。

それは確かにそうだけど、実際にはもっと繊細なニュアンスというものがあるのです。

例えばそのスタープレーヤーの社員がユダヤ人だったとします。

すると心の底で(オレがユダヤ人だから会社はオレの働きに見合った報償を出すのをしぶっているのではないか?)という疑念がどんなに押し殺そうとしてもムクムクとアタマをもたげるわけです。

つまり人種差別です。

カイシャに人種的な偏見があると社員が疑い始めたら、そういう環境下でチームプレイを強いられる会社より勝ち組への利益の分配を神聖視している企業の方が憂いが少ないのは当然です。

また(自分は上司におべんちゃらを使うのは苦手だ)と考える一匹狼型社員は当然、リーマンのような職場では生き生きします。

なおこのようなシステムはEat what you kill(自分が獲った獲物を喰う)システムと呼ばれ、米国の法律事務所などでは標準的なモデルとなっています。