アップルが来るWWDCにスティーブ・ジョブスが登壇すると告知しました。
また当日、iCloudを発表すると公告しました。

アップルが事前に新製品や新サービスの発表を明らかにするのはきわめて異例です。

なぜならばそれはイベントからサプライズの要素を奪ってしまい、Buzzが創り出せないリスクを負うからです。

それではなぜアップルはわざわざプリアナウンスする途を選んだのか?

これについてはTNWのマシュー・パンザリーノが幾つかのセオリーを展開しています。

1.今回のWWDCではiPhoneに関する発表は無いことを強調するため
2.iCloudの力を最大限に引き出す目的でiOS5の大規模な手直しをすると発表するため
3.フェイントをかける意図でやった(この可能性は低い)
4.Buzz創出の為の計算高い煽り(iCloudの重要性に鑑み、最大限のメディア・カバレッジを狙った)

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さて、ここからは蛇足になりますが株式投資の観点から僕の考えを少し補足しておきたいと思います。



iCloudは当然、アップルのデータセンターをベースとして繰り出されるサービスです。

そこで気になるのは最近の米国のハイテク企業の戦いはどんどんクラウド、つまりデータセンターを動員したバトルになっているということです。

その背景には「ネットワークこそがOSである」という発想がだんだん米国のITのプロ達の間で定着しはじめていることがあります。

「ネットワークこそがOSだ」とぶっきらぼうに言われても、普通の人には何の事だかさっぱりわからないと思います。

そこで言葉をカンタンに定義します。

OS(オペレーティング・システム)とは、そのシステムのリソースを管理するソフトウエアを指します。
特定のアプリが作動するためにリソースを割り振る役割をOSは司るのです。

いま「ネットワークこそがOSである」と表現した場合、それが意味していることはユーザーがいろいろなデバイスを使って行う作業の大半はクラウドへ移ってゆき、クライアント側のデバイスの種類はどうでもよくなるという事です。

本当にクリティカルなリソースはデータセンターのサーバ・ファームに所在するわけです。

一例としてスマートフォンの大半のアプリはネットワーク・アプリであり、データセンターにサポートされるリモート・サービスです。

もちろんブラウザーを通じてクラウドにアクセスする限り、どのデバイスでどのサイトにアクセスしても構わないわけですが、強いて言えばネクサスワンなら「Gメール」や「ピカサ」がサクサク動くし、アイフォーンなら「アイフォト」や「アイチューン」や「モービルミー」と特に相性が良いです。

これは些細な問題かも知れません。

しかしなめらかな使用感を出すにはどうしても末端のデバイス(たとえばiPhone)のみならずデータセンターまで一貫してコントロールする必要が出てくるわけです。

その結果、各社はそれぞれ独自のアクセス許可、ペイメント、コンテンツのキャッシュ、ソーシャルグラフなどを巡って自社の「閉じたインターネット」にユーザーを取り込むバトルを繰り広げているわけです。

アップルだけでなく、グーグル、アマゾン・ドットコム、フェイスブックなどはこの陣取り合戦で以前よりどんどん競合しあうようになっています。

ひとつのアナロジーとしてIBM、ヒューレット、シスコ、オラクルなどがよりダイレクトに競争し合い、混戦の様相が深まっているのと似ています。

現在のところインフラストラクチャ・アズ・サービスならアマゾン、グーグル、フェイスブックあたりが強いし、メディア・アクセスならアップル(音楽)、グーグル(ビデオ)、アマゾン(本)が強いという棲み分けが存在します。

しかし将来はお互いがお互いの陣地に攻め込むようなバトルが増えると思うのです。

今日のアップルのiCloudのプリアナウンスはアップルの経営陣がナーバスになっていることのあらわれです。

これからはじまる消耗戦とその不毛さを考えるとき、投資家としてはチョッと気が滅入りました。


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