Pivot(ピボット)という言葉ほど今のシリコンバレーで使い古された言葉も無いでしょう。

ピボットとは、バスケットボールなどで使われる用語ですが、くるっと方向転換することを指します。

スタートアップ企業が「ピボットする」と言った場合、事業戦略が暗礁に乗り上げ、軌道修正を余儀なくされることを意味します。

つまり最初の挫折の瞬間を耳触りの良い表現に直したのがピボットなのです。

それではピボットは駄目な行為なのでしょうか?


いや、それは駄目な行為ではないし、ある意味、若い企業の宿命ですらあります。

なぜならアントレプレナーが起業を思い立ち、最初に描いた構想はしばしば市場の求めているものとズレがあるからです。

言い換えれば、最初からピッタリとツボにはまったサービスや製品を打ち出せる事の方が稀なのです。

実際、いまウォール街で話題になっているホットな企業の多くは大きなピボットを余儀なくされた歴史を持っています。

具体例ではグルーポンがそうですし、今日新規株式公開したパンドラ・メディア(ティッカー:P)もそうです。

見方を変えればピボットはアントレプレナーの当初の思い込み(=勘違い)と市場ニーズの擦り合わせの作業であるとも言えます。

「なにかが違うんだよナ」

このinsight(洞察)は実際に製品やサービスを世に問うてみないと得られない閃きであり、その意味で失敗はムダではないのです。

この「実地でやりながら手直ししてゆく」という、或る意味、「犬も歩けば棒に当たる」式のアプローチはどちらかといえば日本人の不得意とする事ではないでしょうか?

それはわれわれが失敗に対してphobia(病的嫌悪)を持っているからです。

これはなにも起業に際してのみ見られる事ではなく、日本人の就職観にも根強く反映されています。

日本の起業家にとって失敗をすることの経済的・社会的コストが余りにも高すぎることがどうやらその背後にあるように思えてなりません。

してみればシリコンバレーでpivotがちょっとした流行語としてフィーバーしているというのは、アメリカの弱さではなく、逆に強さの象徴なのかなと思う今日この頃です。