もっと有り体に言えば、1999年以降のヨーロッパでまともな成長をしていた国は南欧とかアイルランドなどの、いまやり玉にあがっているPIIGS諸国くらいのものだったのです。でもそれはバブルのあだ花的な成長でした。ドイツはそれがわかっていながら、車や家電製品を南欧がどんどん買ってくれるので放置したのです。でも南欧の不動産ブームが終わるととたんに失業率が高くなり始めました。
それを最初に感じたのはスペインです。スペインは国民の50%が何らかの形で住宅建設や販売に関わっていたと言われています。
ここ10年くらいの欧州のGDP成長率が低い理由は次に掲げてあるような要因によります。
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これは産業別の労働生産性の成長率ですが、通信分野だけは欧州がアメリカより勝っていますけど、それ以外は全部アメリカに負けていることがわかります。
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欧州には米国の財務省に相当する機関がありません。だから欧州全体でバランスをとりながら景気刺激の予算を出すことができないのです。また政策策定過程は複雑で遅いですし、場合によっては政策の一部をやめたり、加盟国をはじき出したりという「後退」の経験が無いこともフレキシビリティーに欠ける一因です。
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アメリカのFRB議長のベン・バーナンキが議会に呼ばれて証言するさまをご覧になった方も多いと思います。また再任の承認もとりつけるのが一苦労でした。このように米国ではFRBは議会からチェック、つまり牽制されています。

欧州中央銀行の場合、欧州議会というのはまだまだ名ばかりの存在でECBのチェック機能が十分作動していません。しかし欧州議会を強くするということは立法プロセスを国のレベルから欧州圏全体のレベルに引き上げることを意味します。国の主権にかかわる問題ですからこの権限移譲は簡単ではありません。
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いま或る国の主権というものを考えた時、政府は金利政策、為替政策、関税政策、財政政策、福祉政策などを決める権限を持っています。しかし欧州連合(EU)では欧州中央銀行(ECB)を設立し、金利政策は中央銀行で一元的に決める事にしました。次に為替政策に関しては通貨ユーロの導入により個々の国が勝手に為替水準を決められなくなりました。またコモン・マーケットの導入により欧州域内での関税を撤廃するなど関税に関する決定はEUに委ねられることになりました。
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すると個々の国が独自に決められるのは財政政策と福祉政策だけになるのです。これは困った状況をもたらします。たとえばメンバー国のひとつが景気が悪くなったからといって金利を下げたり、為替を安く誘導することができないからです。
欧州連合の弱点をまとめておきます。近年、輸出競争力が低下していること、生産性が低下していること、イノベーションが欠如していること、さらに労働政策面での各国の協調に欠けること、EUとしての統一したメッセージの欠如、またEU全般に財政が悪化傾向にあるということなどです。
こうしたもろもろの問題の噴出は、地域統合という価値観がもう古いのではないか?という疑問をヨーロッパの人々の中に植え付けはじめています。


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