ウォール街で話されている英語は我々が普段、TOEICのテキスト本などで学習する英語とは違うのでしょうか?

その答えはYes and Noです。

金融の専門用語を除けば投資銀行のトレーディング・ルームで使われる単語やM&Aバンカー達がボードルームで使う単語の大半は普段我々が教科書で学ぶそれと大差ありません。

しかし教科書の英語とは勝手が違う面もあります。

なんの変哲もないひとつひとつの単語が組み合わされてイディオム(慣用句)になったとたんによそ者には理解できない謎に包まれた会話になってしまうのです。

(その例はこれこれです。)

個々の単語は全部完璧に聞き取れるし、その意味もわかっている。だけどそれが定型的表現になったとたんに意味不明になり思わず焦るという経験をした人は多いと思います。

【なぜウォール街の金融マンは慣用句が大好きなのか】
困ったことにウォール街のディールメーカー(=商談の中心となるキー・パーソン)は慣用句を使うのが大好きです。

それはなぜか?

それはイディオムを使うことで一瞬のうちに相手と「つながる」ことができるからです

金融の世界ではインタンジブル(intangible=カタチのないもの)な商品を扱います。

頭に浮かんだコンセプトを説明し、他のアイデアと競い合い、最終的には相手を説得しなければいけません。だからコミュニケーション・スキルは仕事の成果に直接関わる重要な能力なのです。

【技を必要とするとき】
M&Aの場面では「押しの一手」で攻めまくることも必要かもしれないし、時には繊細にお互いの妥協点を模索する必要もあるかもしれません。さらに相手を懐柔することも必要になるでしょう。

トレーディング・ルームでは次々に決断してゆかなければいけないので状況を瞬時に伝達できるコミュニケーション力が要求されます。

イディオムの持つ魔法は、このような様々な状況下で高度なコミュニケーションが要求されたとき、それらを一瞬にして充足することができる点にあります。

そういう言い方でわからなければ「バシッと決まる、サマになる」という事です。

同胞意識を共有する、その場の雰囲気をやわらげる、勇気を鼓舞する、ユーモアのセンスで難局を乗り切る、相手を牽制する、敵を威嚇する、、、これらの全てにおあつらえむきの定型的表現が沢山存在します。慣用句の利用価値はこのように極めて高いのです。

しかし逆に言えば或る程度、数多くイディオムを知っておかなければそのシチュエーションにピッタリ来る表現は出来ないわけです。

【英語で発想するとはどういう事か?】
またイディオムを沢山自分のレパートリーとしてモノにすると、今度はイディオムから逆にビジネスの状況認識をするという事ができるようになります。それは「英語的な発想」が出来るようになることを意味します。

それが出来るようになれば先ず日本語で考えて、次に英語に翻訳するというステップが省けるので、会話が速くなります。

(こいつは頭が切れるな)と相手に好印象を与える事が出来る瞬間とはそういうときなのです。