インドはBRICsの中で年初来最もパフォーマンスが悪かったです。

その最大の理由はインド準備銀行がインフレをうまく押さえこめていないからです。

加えて与党国民会議派(コングレス)は汚職スキャンダルの後遺症で国民の支持を失っています。

次の総選挙は2014年ですがそれまでに国民会議派は懸案になっている経済改革、税制改革、公共サービスの改善、小売業の自由化、保険業の自由化、補助金の削除、外資の誘致など、やらないといけないことは山ほどあります。

マンモハン・シン首相は先ずプラナブ・ムケルジー財務相を更迭することから内閣改造に着手するものと思われます。



新しい財務相候補として元IMFのモンテク・シン・アルワリア氏の名前が上がっていますが、その他にパラニアパン・チダンバラン氏の名前もあがっています。つまり財務相人事は混とんとしているわけです。

インドは早くGDPの4.6%にのぼる財政赤字を削減しなければいけません。

でもその前にインドが抱えている目下の最大の問題はインフレです。

このグラフはインドの中央銀行であるインド準備銀行が適切なインフレ対策を講じているか?ということを国民に訊いたアンケートです。その結果、40%の人がNOと答えており、中央銀行の采配に不服な国民が多いことがわかります。
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このグラフは国民の立場からみたインフレのエクスペクテーション、つまり期待値です。
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インドはたびたび利上げしているのですが未だ根強いインフレ先高感があることがわかります。

最近インド政府はプロパンガスとディーゼルの値上げを発表しました。インドはエネルギー価格を政府が決めており、世界の実勢価格より低く設定されています。言い換えれば実質的な補助金になっているわけです。このエネルギーへの補助金だけで国庫に年間260億ドルものマイナス要因です。

すると冒頭で申し上げたGDPの4.6%にのぼる財政赤字を削減するためには先ずこのエネルギーへの補助金を削ることが有効というわけです。

しかしこれは政治的には極めて人気の無い政策になります。

下のグラフはインドの工業労働者の消費者物価指数です。
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2001年を100としたときの物価指数となっています。最近、また上昇気味です。

次にインドの農家の人々にとってのインフレを示したのがこのグラフです。
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こちらも高水準にあります。

そこで国民が消費する個々の物品の中でどの商品の値段が動いているのか、代表的なものを抜き取ってグラフ化したのがこれです。
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野菜の値段は最近下がっています。

世界の穀物市況ならびに原油価格を考えた場合、最近いずれも低下してきています。

これはインドにとって良いニュースです。いずれそれはインフレ・プレッシャーの低下というカタチであらわれてくると思います。するといままでのようにギュウギュウに利上げする必要が減るので株式市場にとってはプラスになります。

次はインドの貿易赤字のグラフです。
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これに見られるようにインドは恒常的に貿易収支が赤字になっています。特に原油の世界市況が高騰すると貿易収支の悪化が激しくなるという性格を持っています。

それはインドの輸入のうち30%が原油だからです。その他インドはインフラ投資を積極的に進めている関係で資本財の輸入も多いです。
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すると貿易赤字を何かで埋め合わせしないといけないのです。

その埋め合わせの重要な役割を果たしているのが外国からの直接投資やポートフォリオ投資です。
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インドの地方で海外の企業が工場を建設する場合、地元の反対などがあると外国企業が嫌気がさしてしまい直接投資が鈍ります。つまり政治の安定がこれらの外国資本の誘致に重要なのです。

以上をまとめるとインドのファンダメンタルズは決して良いとは言えません。

財政赤字を削減するにはエネルギーの補助金をやめなければいけないけどインドの政治は汚職スキャンダルで弱くなっています。

良い点としては最近、原油価格や穀物価格が下落基調ですのでこれは将来の金融緩和に伴うラリーの誘発要因になりうる点です。

いずれにせよ海外投資家のインド人気はこの国の実力より先行してしまっていると言えます。


【おしらせ】
この記事は先日行われたCMC Markets Japanでのセミナー(毎月開催しています)から一部抜粋したものです。