メディア王、ルパート・マードックの率いるニュース・コーポレーションは売上規模にして327億ドルにものぼる大企業です。

その「ニュース帝国」を揺るがす事件が起きています。

数年前に起きた盗聴事件に端を発するスキャンダルでいま同社の新聞部門の幹部の首が次々に飛んでいるのです。

この盗聴事件では同社のタブロイド新聞の記者たちの強引すぎる取材方法が英国民のひんしゅくを買い、同社に対する嫌悪感が雪だるま式に膨らみました。


まあ日頃からプライバシーがあって無いような存在であるセレブの人たちは兎も角、イラク戦争で負傷した兵隊さんの実家とか誘拐された少女のケータイのメッセージにハッキングしてネタを探そうとするのは「下の下」のメディア人がやることです。

取材効率から言えば被害者の実家に盗聴を仕掛けるのがスクープを得るのには一番早いのは当たり前のことで、これは強引というより怠惰な取材態度だと言えるでしょう。

それは兎も角、米国でも9・11の際に被害者の家族に盗聴を仕掛けたのではないか?という疑惑が出て、その瞬間にマードックはタブロイド部門を当時担当していたレベッカ・ブルックスと当時英国の新聞部門の責任者で今はニュース・コープ傘下のダウジョーンズのトップを務めているレス・ヒントンの解雇を発表しました。

これはどうしてか?といえばニュース・コープは米国のテレビ局、FOXを傘下に持っており、FOXは保守主義的な視聴者をベースにしているからです。若し好戦的で愛国的なFOXの関連会社が9・11の犠牲者の家族に盗聴を働いていたなどということが事実であれば、これはシャレにならないわけです。

そこでマードックはニュース・コープのフランチャイズ価値が毀損してしまわないうちに「トカゲのシッポ切り」で関係者を全部粛清してしまう判断に出たわけです。

今回のニュース・オブ・ザ・ワールドの廃刊は同社の株価にとって中期的にみればたぶんプラスでしょう。

なぜならニュース・コーポレーションにとって新聞部門はお荷物だからです。

下は同社の部門別売上高と利益を示したグラフです。新聞部門は売上高こそ大きいですが利益の貢献度にはさびしいものがあります。
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ニュース・コーポレーションは新聞部門が足を引っ張って、営業マージンの比較では他のメディア・コングロマリットより薄利に甘んじています。
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同社は今はニューヨークタイムズやワシントンポストと同じ程度の営業マージンのグループに括られていますが、ニュース・オブ・ザ・ワールドを廃刊することでディズニーやヴァイアコムと同等の収益性を目指したいと考えている筈です。

もちろん、今回首にされたレベッカ・ブルックスやレス・ヒントンはマードックが目をかけて育てたマネージャー達です。でもマードックにとっては所詮、彼らは使用人。

ニュース・コープのクラスB株式(投票権つき)の39.7%はマードックが支配しており、同社は結局のところ家族経営(ファミリー・ビジネス)なのです。