ウォールストリート・ジャーナルは日曜日の記事で欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁と民間金融機関の間で溝が出来始めていることを指摘しています。

今週木曜日に欧州の首脳は会議を開き、9月には再び資金が尽きてしまうギリシャへの「支援第二枠」をどうするかを協議します。

この「支援第二枠」は去年の5月に決まった1100億ユーロの救済(=「支援第一枠」)に次ぐ、追加支援であり、新たに1000億ユーロ程度が必要になると言われています。

現在のギリシャは国の税収のほぼ全額が右から左へ利払いに回されるような状況であり、ハッキリ言って破綻同然です。

だからそのような国の債券が「満額で償還」というのはムリな話で、或る程度のヘアカットは仕方がないというのが民間金融機関のコンセンサスになりつつあります。


いまギリシャ国債を沢山持っているのはギリシャ国内の金融機関と欧州中央銀行(ECB)です。

このうちECBは「ヘアカットということになると資本不足になってしまう」という懸念から、ヘアカットを頑なに拒んでいます。

このため議論は堂々巡りになってしまい、何も決まらない状態になっているのです。

そこで民間金融機関の間では「それじゃ、ECB抜きでやろうか?」というムードがだんだん台頭しています。

この根回しをしているのは世界の400の民間金融機関の業界団体であるInstitute for International Finance(IIF)です。IIFのボスはチャールス・ダラーラで、この人は南米の債務危機の時、ニコラス・ブレディー財務長官の下で実際にブレディー・ボンドのプランを策定した人です。

ドイツは「ヘアカットのようなカタチで民間金融機関も一部痛みを分かち合わない限り無制限に救済し続けるのは嫌だ」と主張しています。そして現状ではドイツのこの主張がだんだん勢いを持ち始めているような印象です。

逆にいえば「駄目だ駄目だの一点張りのECBにはもう愛想が尽きた」という気持ちに関係者はなっているのです。「トリシェ総裁が浮いちゃっている」と言い直しても良いかも知れません。

「ECBがそんなに駄々をこねるのなら、いっそEFSF(=欧州金融安定化基金)の残金を使って今ECBが抱えているギリシャ債を肩代わってはどうかな?」そういう議論も真面目に出てきています。

もちろんトリシェ総裁が頑なにヘアカットを拒んでいるのはECB総裁としての彼の立場がそれ以外の選択肢を許さないという事情があります。トリシェ総裁自身は欧州版ブレディー・ボンドなどの解決法に本音ベースでは同情的かも知れません。

僕がそう考える理由は南米の債務危機問題でブレディー・プランが策定されたとき、米国のチャールス・ダラーラの相手方として欧州を代表してブレディー・プランの策定に参加した第一線の実務担当がトリシェその人だったからです。