ジョージ・ソロスが他人のお金の運用を止めると発表しました。

なぜか?

真相は本人に聞かないとわからないけど、要するに「他人のお金が要らなくなった」からだと僕は思います。

米国の投資銀行界には「理想のアガリ方」というのがあって、先ず優秀な学生はゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの有名な投資銀行に就職します。

その「勝ち組」の中でも特に腕前に自信のある奴は数年勤めて人脈や評判を固めればサッサと退職してヘッジファンドを始めます。(永年勤続は優秀さの証ではありません。)

ヘッジファンドの運用資産をどんどん大きくすると投資銀行で稼いでいた時のボーナスの10倍とか、時には100倍もの収入を得ることが出来ます。(但しサラリーマンとして誰かのファンドに雇ってもらっていては駄目。)

そして自分自身のカネもそのファンドの中で運用するわけですが、ある時点で外部投資家の資金を全部返してしまって、自分のカネだけを転がすことに専念するわけです。

なぜ他人の資金を返すのか?

これはファンドの規模によっても理由はことなります。

ソロスのような成功しているファンドの場合、最大の理由はトレーディング・ストラテジーの面での制約でしょう。

つまりファンドの規模が大きすぎて「池の中のクジラ」のような存在になるとそれだけ大きな資金を突っ込む先を探すのが大変になります。

小さい資金なら効率よく取れるようなトレード機会でも、巨大ファンドでは生かせない、、、そういうチャンスの方が世の中多いのです。


だから成功しすぎたカリスマ投資家の大半は自分の個人資産の運用だけをやっています。マイケル・スタインハートとかマイケル・プライスとかがその例です。

あと、これは別のお金を返す例ですけど、ある年、外部投資家の資金を運用しているファンドで運用成績が大きくマイナスを記録した場合、その「水面下に没している」投資家のリターンがファンド買い付けコスト以上(=これをハイ・ウォーターマークと言います)に戻るまではパフォーマンス・フィー(=ファンドの運用利益の20%をファンド・マネージャーが取る事)を課すことができないと定款に規定されているファンドが多いです。

その場合、「今年、デカいヤラレになったので、あと何年もかけてパフォーマンスを取り戻すより、一旦、ファンドをやめて、また新しく始めた方が得だ」と考えるヘッジファンド・マネージャーも居ます。これもファンドがお金を返すひとつのシナリオです。

三番目の理由は法的規制で法務コストが嵩むという点です。これには運用資産や顧客数によって数段階のハードルがあると思います。ソロスの場合も米国証券取引委員会のルール変更で嫌気がさしたという事を投資家へのレターの中で言及しています。

ただ僕が考えるにソロス・ファンドくらいの規模になると法務コストをファンドの経費の中で落とすことはカンタンなので、これはファンドを閉じる「表向きの理由」でしょう。

それから他人のお金を運用することで発生する開示義務もトレーディング・ストラテジーの模倣をはじめさまざまな制約の原因になります。


【ジョージ・ソロスに関係する過去のエントリー】
「私は或るルールに基づいてトレードするのではない。ゲームのルールが変わる瞬間をめがけてトレードを仕掛けるのだ。」(ジョージ・ソロス) グローバル・マクロのこころ

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