米国の連邦債務上限引き上げ問題に関しオバマ大統領と上院のリーダーたちが新しい妥協案に関して合意しました。

ここでのキーワードは「リーダーたちが」という部分です。

現在の上院と下院のリーダーの統率力はとても弱く、いくらリーダー同士が合意しても「オレは従いたくない」とリーダーにたてをつく議員も沢山居るのです。

この新法案は上院、下院で投票にかけられ、可決される必要があります。とりわけ下院はこの新法案に不満を持つ議員も多いので、同法案が100%の確率で成立する保証はありません。

新法案では今後10年間で財政赤字を2.4兆ドル圧縮するという約束の下、現在の債務上限14.3兆ドルをもう2.1兆ドル引き上げます。

新法案は2つの段階に分かれています。

第一段階では当面の債務上限を今年末まで政府予算が続くだけ引き上げ、それと同時に政府支出の1兆ドル削減に合意します。

第二段階では来年以降の債務上限引き上げに際し、1.5兆ドルの追加的支出削減を目指します。そのために12名から成る超党派の特別諮問委員会を設置します。若し追加的支出削減の話し合いが上手くいかない場合は当面の財政支出を1.2兆ドル自動的に絞り込むメカニズムを組み込みます。

なぜ12名の委員会が追加的支出削減を議論した方が良いのか?という点ですが、現在の上院、下院は余りにまとまりに欠けているので全員参加でものごとを決めようとすると何も決まらないからです。ただ12名の特別諮問委員会の到達した追加的支出削減案を他の議員サンたちがすんなりと受け入れるかどうかはわかりません。

新法案が米国経済に与える影響としては同法案は増税を含まず、財政支出削減だけが盛り込まれているので、政府支出が米国経済のなかで占めるシェアは今後低下すると考えられます

マーケットにとってはこれが重要な部分です。

だから今日のところはマーケットは「ホッと一息」のラリーとなるでしょうが、いずれ米国経済の成長に対する不安がラリーの火を消すでしょう。

下のグラフは米国の実質GDP成長への部門別貢献度を示したものです。
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2011年の第1四半期には輸出が最も成長に寄与していたことがわかります。一方政府部門は今後だんだん成長の足手まといになると予想されます。なぜなら今回の新法案に基づく財政赤字削減で政府は支出を抑えなければいけないからです。

「米国政府が無制限に財政出動することで景気テコ入れをする事はもうムリだ」という認識が投資家の心にじんわりと沁み込むのはこれからです。

次に米国の長期ソブリン格付けの問題ですがスタンダード&プアーズはかねてから「少なくとも4兆ドル程度の財政赤字削減が無ければトリプルAをはく奪する」という事をシグナルしています。

今日の新法案がトリプルAを維持するのに十分かどうかは疑問が残ります。

つまりデフォルトは回避できたけど、トリプルAのはく奪を回避できたかどうかは未だわからないのです。