背景:Market Hackの月例編集会議で「新しい企画として日本人に馴染みの深い世界の人気企業の経営内容や企業戦略を紹介するのはどうか?」という意見が出ました。なかなか面白い企画だと思うので、早速、今夜決算発表が予定されているハンドバッグのコーチを手始めに紹介したいと思います。


CoachLogo

コーチはマンハッタンに本社を置くバンドバッグやアクセサリーのブランドです。同社のモットーは高品質なアメリカン・ブランドを提供してゆくというものです。

同社の第一印象は財務内容に非の打ちどころがないという点です。

無借金経営です。キャッシュフローが潤沢です。グロスマージンは76%もあります。リーマン・ショック直後の2009年だけは前年比マイナス成長を喫したけれど、それ以外はずーっと着実にEPSを伸ばしてきました。配当もちゃんと出しています。ROEは50%です。

同社の創業は1941年ですから意外に古い会社です。でもずっと食品を中心とするコングロマリット、セラ・リー(SLE)の傘下だったこともあり、その頃は影の薄い存在でした。

しかし2000年にニューヨーク証券取引所にIPOされ、その後、エクスチェンジ・オファーで親会社のセラ・リーが持っている残りのコーチ株を投資家にディストリビューションしました。

コーチは特に日本人に人気のあるブランドですが、これに目をつけた住友商事が日本でジョイント・ベンチャー、コーチ・ジャパンを設立しました。その後、コーチが住友商事の持ち株を買い取り、今では日本法人を100%子会社にしています。

同社の売上の87%は直販店からあがっており、ブランド・イメージのコントロールにとりわけ気をつかっています。ストアは北米(直販店売上高の64%)の他に日本(同20%)、香港、マカオ、中国本土(3つ合わせて3%)にあります。

店舗数は:
北米 342店舗
日本 161店舗
中国 41店舗

となっています。

この他、小さな海外卸売部門があります。

売上の内訳は63%がハンドバッグ、28%がアクセサリー、その他が9%となっています。

同社のハンドバッグの商品群はクラッシックなデザインにヒントを得たものを中心としており、四半期ごとに3から4程度のコレクションを発表します。ひとつのコレクションの中では4から7程度のスタイルを取り揃えることにしています。またそれらの製品は機能的であること、幅広い消費者層に受け入れられるものである事などを基本方針としています。デザイン・チームは(僕の理解が正しければ)全部ニューヨークに所在しています。

同社の売上高の推移は下のグラフのようになっています。
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現在は世界の景気見通しが不透明なことに加えて日本経済の先行きもハッキリしないため、同社の売上成長率は今後漸減すると考えておいた方が良いでしょう。

次にマージンですが歴史的に極めて高かったです。
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最近、少しマージンが落ちているのは日本市場の全体に占める割合が少し下がっているからです。(日本はとりわけマージンが高く、オイシイ市場です)

また素材である皮革の仕入れコストの上昇と労賃の上昇プレッシャーもマージンに悪影響を及ぼしています。

一株当り利益(EPS)と一株当りキャッシュフロー(CFPS)の推移は下の通りです。
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ROEのグラフです。
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なお同社の第4四半期決算は今夜寄り付き前に発表される予定でコンセンサス予想は65¢、ウィスパー(囁き=直近の市場の期待)は68¢です。売上高のコンセンサス予想は10.1億ドルです。

今期の決算の見どころとしては東日本大震災の影響がまだ残っていると思われるので、それがどうなっているかという点です。因みに前回のカンファレンス・コールでは第4四半期中の東日本大震災の業績へのインパクトは売上高にして2000万ドル(=2%)程度、EPSにして2¢程度という説明がされています。

また同社は通常、四半期決算カンファレンス・コール(現地朝8:30AMより)ではガイダンスを出さないことで知られています。なお、新しくCFOに任命されたジェーン・ニールセンの正式着任は9月1日ですが今回、彼女もカンファレンス・コールに参加するかどうかが注目されます。
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