ユーロ圏共同債とはドイツ、フランスなどをはじめとする欧州連合加盟国が共同して発行する超国家的な債券のことを指します。

現在は構想の段階であり、ユーロ圏共同債は存在しません。

(なおユーロ圏共同債にはEurobondsという英語があてられます。実はEurobondsという英語は全く別の種類のドル建て債を指す場合もあります。混乱を避けるためここではそれは論じません。)

ユーロ圏共同債は単独の国よりもっと大きな主体が発行する債券なので一般論として国債よりも更に信用力があると考えられています。

欧州連合加盟各国が超国家的にひとつになって共同の債券を出せば「借金のコスト」、つまりユーロ圏共同債の発行時の利回りが低くて済むと想定される理由はこのためです。

現在、ギリシャなどの苦境に陥っている国を救済するメカニズムには欧州金融安定化基金(EFSF)という取り計らいが存在しますが、これは欧州憲法上の制約を迂回するために特別目的会社の体裁を取っており、より高い格付けを獲得するためには基金の一部を貸し出しに回さず基金内に維持する必要があります。

このため実際に貸し出せる金額が構造上の非効率から減額されるという点で「ベストの調達方法ではない」というコンセンサスが出来ています。

その点、ユーロ圏共同債はストレートな構造になっているので資金調達力の最大限を救済に回すことが出来ます。

ユーロ圏共同債が実現した場合、ユーロ加盟各国は決められた負担率(例えば欧州中央銀行資本分担比率など)に応じて国家の税収の一定額をユーロ圏共同債の利払いや元本の返済に充当することになります。
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その場合、それぞれの国の国債の利払いや元本の返済よりもユーロ圏共同債への支払いが優先すると考えるのが自然ですが、この部分は今後ユーロ圏共同債構想が具体的に詰められる過程で議論されることになると思います。

もしユーロ圏共同債への支払いが優先する(=これをシニアといいます)となるとそれは国家の財政権をユーロという超国家的上部構造が制圧する構図になります。

「財政主権を侵害される」という危惧を個々の国が抱くのはそのためです。


また欧州憲法も改正される必要があるでしょう。

これまでの欧州連合(EU)は「中央銀行は持つけれど、財務省に相当する機関は存在しない」という体裁を取ってきました。ユーロ圏共同債の発行はその既成秩序をなし崩しにし、事実上、欧州財務省に相当する機能の存在を認めることになります。

つまり欧州はユーロ危機に直面して「ユーロから弱い国がどんどん脱落するのを許すか?それともいっそのこと今まで以上に緊密に連携するか?」の選択を迫られているわけです。

ユーロ圏共同債の発行には賛成派と反対派が居ます。

【おもな賛成派】
ドイツ卸売・貿易連合会(BGA)=ドイツの実業界はユーロの維持を強く主張しており、当然、ユーロ圏共同債の発行にも賛成です。
ドイツ左派
フランス左派
イタリア経済省

【おもな反対派】
ドイツ政府
ドイツ国民

なぜドイツの輸出業者がユーロ圏共同債の発行に賛成しているかといえばドイツの輸出業者にとって弱いユーロはドイツ・マルクの復活より好ましい状態だからです。

下のグラフは金融危機以降の景気回復局面での成長への寄与度を示したグラフですが、ドイツは明らかに輸出主導で景気を回復したことがわかります。
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これに対してユーロ圏共同債に反対の意見を唱える人は一般市民に多く、「なぜ我々がギリシャの尻拭いをしなければいけないのだ?」という考えを持っています。