元ヴォルピ・ブラウン・ウェーランのアナリストでシカゴ大学のMBAコースで講師を務める著者アン・ローグはデイトレーダーを次のように定義しています。

Day traders are speculators working in zero-sum markets one day at a time.
デイトレーダーとはゼロサム・ゲームの市場において一日区切りでトレードする投機家たちを指す。

ゼロサム・ゲームとは単純化して言えば勝者と敗者が同数の市場を指します。例えばCMEに代表される海外先物市場がその例です。

ゼロサム・ゲームと対比される概念にアップワード・バイアス(upward biased market)というのがあります。「株は長期で持てば上がる」というような考え方をアップワード・バイアスと理解して良いと思います。

アップワード・バイアスの市場では我慢して株を抱いていれば理屈の上では誰もが儲かる筈です。日本の証券界は長いことそういう風に投資家を教育してきたし、多くの投資家はこの考えを投資の世界の常識(conventional wisdom)として受け入れてきました。

ただ実際には世間の常識と言われるものは疑ってかかった方が良い場合もしばしばあります。

その一例として日本株のマーケットは1990年以来、実に20年以上も長期ベア・マーケットを経験しています。

するとこれはもうアップワード・バイアスではありません。

むしろダウンワード・バイアス(downward biased market)という認識こそが日本株市場に対する長期での正しい認識だったのです。

ダウンワード・バイアス市場でロング・オンリー(long only)の投資スタンスを取った場合、かなりの確率で負けます。


ロング・オンリーというのは「買い」から入る投資法の事を指します。普通に株式や投資信託を購入する方法はロング・オンリーの投資戦略です。

なお断っておきますが僕はここでロング・オンリーが悪く、デイトレーディングが良いと主張する気はありません。どちらかの優劣を論じているのではないのです。

(実際、僕自身、長期投資もやっているしデイトレもやっています。)

そうではなくて投資スタイルを選んだら、それに適合した戦略や成果の検証を行わなければいけないということを伝えたいのです。

そこで最初の引用に戻るとデイトレはone day at a time、つまり一日区切りで「今日は駄目だった」とか「今日は上手くトレードできた」という風に自分の成績を振り返るわけです。そして「明日は今日よりチョットだけ良いトレーダーになろう」という事を心がけるわけです。

そのような研鑽を積むことで5勝5敗だった成績を長い年月をかけて6勝4敗に持って行ければ、それはトレーダーとしては大成功です。その意味ではデイトレはこつこつとしたカイゼンの積み上げであり、根気のある人が成功しやすいです。

なお根気があるということと辛抱強いということは全く別です。むしろ辛抱強さはロング・オンリーの投資家に要求される資質です。

こつこつとカイゼンを積み重ねることができ、根気がある人でも必ずデイトレーダーとして成功するとは限りません。いや、多くの人はやっぱり失敗すると思います。前出のアン・ローグによればデイトレーダーの8割は1年目で失敗するのだそうです。

ただデイトレーダーの脱落率がめちゃくちゃ高いかと言えば、それはそうとも限らないと彼女は指摘します。なぜなら:

1年目で脱落する割合

不動産セールス 86%
マラソン完走にむけてのトレーニング 70%
大学1年生の中退比率 33%
レストランを開業し、1年以内に廃業に追い込まれる確率 26%
教職に就いたけど自分に向いてないことがわかり辞める確率 13%

という具合で余り落伍者が出ないと思われる分野でも脱落するケースは案外見られるからです。