古典を原書で読む方法として:
というマルチメディアを駆使した攻め方を以前の記事で提案しました。
今日はその話の続きで、「それじゃ実際にどの作品からはじめれば良いのか」という事を示します。
英語で書かれた究極の古典という事になると、やっぱりシェークスピアになると思います。
でもシェークスピアは古い文体で書かれているのでメゲます。
また芝居の脚本はシーンが全て描き切られているのではなく、余白も多いです。
本来、それが上演される時には役者さん独自の解釈でその余白が埋められるのだと思います。逆に言えば台本だけを読むのには辛いものがあるということです。
これらの理由から最初からいきなりシェークスピアにチャレンジするのは薦めません。
因みに僕個人の一押しは『As you like it(お気に召すまま)』です。
シェークスピアの作品は大きく分けて喜劇、悲劇、時代モノの三つのカテゴリーに分類できますが、『お気に召すまま』はそのうちの喜劇に入ります。
僕がこの作品を好きな理由は:
1.主人公のロザリン(Rosalind)のキャラがすごく良い
2.変装(cross-dressing)に代表されるシェークスピアお得意の性別倒錯(gender reversals)を使ったストーリー・テリングのテクニックが味わえる
などによります。

(ロザリン 出典:ウィキペディア)
さて、シェークスピア以外の古典となると色々な選択肢があると思います。
教養という観点からだけならプラトンなどもっと時代の古いモノの方がカクテル・パーティーなどの場面で自慢できます。
でもここではあくまで英語の勉強を兼ねて古典を読むという切り口で話をしているので、古典を読む事で英語力の足しにもなるような、或る程度コンテンポラリー(同時代性を持った)な作品の方が最初は良いかなと思います。
小説として完成されているという点ではジェーン・オースチンはとても端正な小説を書きます。
オースチンはいろいろな作品を書いていますが、その中で主人公に最も感情移入しやすいという点では『エマ(Emma)』と『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』という事になると思います。
『エマ』に関しては過去に何度も映画化、TVドラマ化されています。
1996年のグウィネス・パルトローが主演した映画(エマの「お人よしだけど無神経」というキャラを見事に演じています)が有名です。
「安上がりに英語力をUPする必殺技」シリーズでは感情移入できる主人公を先ず特定し、それをレバレッジすることによって原書読破という苦行をやり遂げるという事を提案しているので、ここで主人公が好きになれるか、なれないかは大事なポイントです。
その点、グウィネス・パルトローの演じている『エマ』のキャラには捨てがたいものがあります。
でも僕としてはむしろ2009年のBBC制作のTVシリーズの方を推したいと思います。こちらの主演はロモーラ・ガライです。
1.まずその古典を映画化した映画を観てしまう
2.オーディオ・ブック(朗読された本のCD)を聞く
3.キンドル・ソフトウエアをgetして無料で原書をダウンロード
4.オーディオ・ブックが手に入らない場合はオーディブル・ドットコム
というマルチメディアを駆使した攻め方を以前の記事で提案しました。
今日はその話の続きで、「それじゃ実際にどの作品からはじめれば良いのか」という事を示します。
英語で書かれた究極の古典という事になると、やっぱりシェークスピアになると思います。
でもシェークスピアは古い文体で書かれているのでメゲます。
また芝居の脚本はシーンが全て描き切られているのではなく、余白も多いです。
本来、それが上演される時には役者さん独自の解釈でその余白が埋められるのだと思います。逆に言えば台本だけを読むのには辛いものがあるということです。
これらの理由から最初からいきなりシェークスピアにチャレンジするのは薦めません。
因みに僕個人の一押しは『As you like it(お気に召すまま)』です。
シェークスピアの作品は大きく分けて喜劇、悲劇、時代モノの三つのカテゴリーに分類できますが、『お気に召すまま』はそのうちの喜劇に入ります。
僕がこの作品を好きな理由は:
1.主人公のロザリン(Rosalind)のキャラがすごく良い
2.変装(cross-dressing)に代表されるシェークスピアお得意の性別倒錯(gender reversals)を使ったストーリー・テリングのテクニックが味わえる
などによります。

(ロザリン 出典:ウィキペディア)
さて、シェークスピア以外の古典となると色々な選択肢があると思います。
教養という観点からだけならプラトンなどもっと時代の古いモノの方がカクテル・パーティーなどの場面で自慢できます。
でもここではあくまで英語の勉強を兼ねて古典を読むという切り口で話をしているので、古典を読む事で英語力の足しにもなるような、或る程度コンテンポラリー(同時代性を持った)な作品の方が最初は良いかなと思います。
小説として完成されているという点ではジェーン・オースチンはとても端正な小説を書きます。
オースチンはいろいろな作品を書いていますが、その中で主人公に最も感情移入しやすいという点では『エマ(Emma)』と『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』という事になると思います。
『エマ』に関しては過去に何度も映画化、TVドラマ化されています。
1996年のグウィネス・パルトローが主演した映画(エマの「お人よしだけど無神経」というキャラを見事に演じています)が有名です。
「安上がりに英語力をUPする必殺技」シリーズでは感情移入できる主人公を先ず特定し、それをレバレッジすることによって原書読破という苦行をやり遂げるという事を提案しているので、ここで主人公が好きになれるか、なれないかは大事なポイントです。
その点、グウィネス・パルトローの演じている『エマ』のキャラには捨てがたいものがあります。
でも僕としてはむしろ2009年のBBC制作のTVシリーズの方を推したいと思います。こちらの主演はロモーラ・ガライです。
その理由として、これは『エマ』に限った事では無いのですが、映画だとどうしても2時間という時間的な制約の中で撮る必要があり、オリジナルのストーリーが省略されすぎる傾向があるからです。その点、BBCのシリーズは時間的制約が無いので丁寧に原作を再現しています。
『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』では1995年のBBC制作のTVシリーズが有名です。この作品ではダーシー役を演じたコリン・ファースの演技が注目されました。
なお英語としては『エマ』や『高慢と偏見』はいずれも1815年前後に出版されており、古めかしい英語で書かれているので原書を当たる場合、ちょっと辛い面もあります。
また英語そのものが読めても時代背景などがわからないと何の話をしているのかチンプンカンプンになります。例えば『高慢と偏見』には「シェーズ・アンド・フォア」という表現が出てきます。
ここでのシェーズとは軽装二輪馬車を指しますがfour(4)は四頭の馬によって引かれていることを意味します。
下の絵は一頭の馬によって引かれているのでchaise and oneということになります。

シェーズは長距離の旅行の際、良く使用されたタイプの馬車で、四頭立てという事はそれだけ沢山の馬を所有できるのでお金持ちだという意味です。
さしずめ現代ならV4(4気筒)か、V8(8気筒)かという議論に近いでしょう。
このようにfourという単語を知っていても、それが四頭立てを意味し、お金持ちを意味することを知らなければ何の話をしているのかサッパリわからないわけです。
こうした時代背景のハンディキャップは作品の書かれた時代が現代に近くなるほど気にならなくなります。
その例としてチャールズ・ディッケンズの『大いなる遺産(Great Expectations)』は1860年頃に書かれた作品ですが、この時代になると英語そのものの面でも時代背景やしきたりの面でも戸惑う部分がかなり少なくなり、原書を読む際のハードルは低くなります。
ジェーン・オースチンの時代からは僅か50年くらいしか経っていないのに、原書から受けるイメージや読みやすさはすごく変わるわけです。
『大いなる遺産(Great Expectations)』も何度も映画化されていますが、ここでは1999年にBBCとボストンのWBGHが共同で制作したTVシリーズを推したいと思います。シャーロット・ランプリングのミス・ハヴィシャムが印象に残ります。
ディッケンズと同じ時代に活躍した女流作家にブロンテ三姉妹がいます。それぞれの代表作品は:
です。
『ジェーン・エア(Jane Eyre)』ならトービー・スティーブンスとルース・ウィルソンが共演した2006年のBBC制作のTVシリーズが一押しです。
『嵐が丘(Wuthering Heights)』なら1992年のパラマウント版が良いでしょう。
『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』では1995年のBBC制作のTVシリーズが有名です。この作品ではダーシー役を演じたコリン・ファースの演技が注目されました。
なお英語としては『エマ』や『高慢と偏見』はいずれも1815年前後に出版されており、古めかしい英語で書かれているので原書を当たる場合、ちょっと辛い面もあります。
また英語そのものが読めても時代背景などがわからないと何の話をしているのかチンプンカンプンになります。例えば『高慢と偏見』には「シェーズ・アンド・フォア」という表現が出てきます。
“Why, my dear, you must know, Mrs. Long says that Netherfield is taken by a young man of large fortune from the north of England; that he came down on Monday in a chaise and four to see the place.(後略)”
(Pride and Prejudice, Chapter One)
ここでのシェーズとは軽装二輪馬車を指しますがfour(4)は四頭の馬によって引かれていることを意味します。
下の絵は一頭の馬によって引かれているのでchaise and oneということになります。

シェーズは長距離の旅行の際、良く使用されたタイプの馬車で、四頭立てという事はそれだけ沢山の馬を所有できるのでお金持ちだという意味です。
さしずめ現代ならV4(4気筒)か、V8(8気筒)かという議論に近いでしょう。
このようにfourという単語を知っていても、それが四頭立てを意味し、お金持ちを意味することを知らなければ何の話をしているのかサッパリわからないわけです。
こうした時代背景のハンディキャップは作品の書かれた時代が現代に近くなるほど気にならなくなります。
その例としてチャールズ・ディッケンズの『大いなる遺産(Great Expectations)』は1860年頃に書かれた作品ですが、この時代になると英語そのものの面でも時代背景やしきたりの面でも戸惑う部分がかなり少なくなり、原書を読む際のハードルは低くなります。
ジェーン・オースチンの時代からは僅か50年くらいしか経っていないのに、原書から受けるイメージや読みやすさはすごく変わるわけです。
『大いなる遺産(Great Expectations)』も何度も映画化されていますが、ここでは1999年にBBCとボストンのWBGHが共同で制作したTVシリーズを推したいと思います。シャーロット・ランプリングのミス・ハヴィシャムが印象に残ります。
ディッケンズと同じ時代に活躍した女流作家にブロンテ三姉妹がいます。それぞれの代表作品は:
シャーロット・ブロンテ 『ジェーン・エア(Jane Eyre)』
エミリー・ブロンテ 『嵐が丘(Wuthering Heights)』
アン・ブロンテ 『アグネス・グレイ(Agnes Grey)』
です。
『ジェーン・エア(Jane Eyre)』ならトービー・スティーブンスとルース・ウィルソンが共演した2006年のBBC制作のTVシリーズが一押しです。
『嵐が丘(Wuthering Heights)』なら1992年のパラマウント版が良いでしょう。