JPモルガンが「欧州通貨同盟の危機を9歳の子供の目から見れば 欧州の地域政治の行き詰まり:周辺国救済のコストを誰が負担すべきか?」と題したリサーチ・レポートを出し、話題になっています。
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この絵に付けられた番号の説明は:

1.闘牛士(トレアドール)とF-1ドライバーはスペイン、イタリアに代表される欧州周辺国を表している
2.3人の中世の兵士はドイツのキリスト教民主同盟(CDU)、キリスト教社会同盟(CSU)、自由民主党(FDP)を表している
3.水色と白の水兵服を着た少年はフィンランドを表している
4.にんじんを持った緑の服の女性はドイツ左翼党を、その横の農夫は同盟90/緑の党を表している
5.ウォータン(ドイツの神)はブンデスバンク(ドイツ中銀)を表している
6.豚の貯金箱は国際通貨基金(IMF)を表している
7.銀髪の銀行家は欧州中央銀行(ECB)を表している
8.赤いチョッキの男はポーランドを表している
9.画家はフランスを表している
10.怒ったシェフ、掃除夫、パイロット、その他の人々は欧州の納税者を表している
11.ストーム・トルーパーは欧州委員会(EU Commission=EUの政策執行機関)と欧州連合各国の財務相を表している
12.単眼鏡をかけた銀行家は欧州の国債保有者と株主を表している

赤の矢印はそれぞれの登場人物が誰に周辺国救済のコストを押し付けようとしているかの方向性を示しています。そして各登場人物の利害や考え方についてはJPモルガンのリサーチは以下のように解説しています。(直訳ではなく、あくまでも抄訳です)


スペイン、イタリアならびに周辺国(1.)は欧州中央銀行(7.)にそれらの国の国債を買い支えてほしいと考えている。なぜならそれは金利上昇を防ぎ、財政緊縮政策が効果を発揮するまでの間の時間稼ぎになるからだ。

イタリアの存在は特に重要である。なぜなら同国のGDPの25%に相当する国債が来年償還を迎えるからだ。また1000億ユーロにのぼるイタリアの銀行の社債も借り換えする必要が生じる。イタリアは以前にも財政緊縮政策を実施した過去がある。しかしその時は欧州通貨同盟参加という「にんじん」をぶら下げられていた。このご褒美は幻想に終わった。イタリアの経済成長は欧州通貨同盟に参加してから鈍化した。

ドイツの与党連合(2.)はドイツ連邦議会を過半数支配している。彼らはいまドイツがやっているいろいろな支援策を拡大することには反対だ。この3政党の中の少数派にはEFSFの拡大に反対の立場をとる議員も居る。与党連合は周辺国の雇用ならびに年金改革を進めるべきだと考えており、それが約束されるまではユーロ圏共同債の発行はお預けにしたいと考えている。

フィンランド(3.)は欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の同国負担分がギリシャへの支援で毀損することに対して追加的な担保を要求すると主張している。これを見てオランダもフィンランドの主張に同調する気配を見せている。

ドイツ左翼党と同盟90/緑の党(4.)はドイツ連邦議会では野党を構成している。しかし若し解散総選挙となれば彼らが現在の与党連合に代わって過半数を牛耳れるという世論調査の結果が出ている。この両党はEFSFを4400億ユーロに拡大することについては賛成である。そして欧州通貨同盟の存続を守るためなら欧州財務省の設置も仕方ないと考えている。

ブンデスバンク(ドイツ中銀 5.)はドイツの金融政策の最後の守護神である。ブンデスバンクはすでに発表された周辺国救済プランに関しても大いに不安を抱いている。まず各国が財政緊縮政策を実施し、雇用・年金改革を実施することを望んでいる。また周辺国の国債の購入者はそれ相応の負担(ヘアカット)を受け入れるべきだと考えている。

国際通貨基金(IMF 6.)は受け身的な立場に甘んじている。ギリシャへの支援融資はギリシャがちゃんと財政緊縮政策を実施しなかったという点で落胆すべき結果に終わった。経済学者ケネス・ロゴフはIMFはギリシャにおべっかをつかっていると酷評している。

欧州中央銀行(ECB 7.)は市場でスペインやイタリアの国債を買い支えている。ECBはこの損な役回りを恨めしく思っている。本来なら納税者が救済の負担を負うべきだと考えている。

ポーランド(8.)は今回の危機で最終的に誰が負担をかぶるかを見極めようとしている。若しポーランドの国民にとって損な結果になるのであれば欧州通貨同盟への参加は見合わせようと考えている。

フランス(9.)はEFSFが機動的に動けない場合、欧州中央銀行が代わりに救済の主体となることを望んでいる。フランスは欧州財務省の設置には積極的だ。

欧州の納税者たち(10.)はEFSFの拡大やユーロ圏共同債の発行で自分達の負担がふえるのではないかということを懸念している。赤の矢印の多くが彼らに向けられており、結局は納税者にしわよせが来る危険性が高いことを示唆している。

欧州委員会(11.)は欧州中央銀行による国債買い入れを支持している。また欧州財務省の設置にも賛成である。

欧州の国債保有者(12.)は欧州中央銀行による国債買い支えで良い思いをしている