まもなく欧州中央銀行(ECB)の政策金利発表があります。

大方の予想はECBが現行の政策金利1.50%を維持するというものです。

ECBはこの春、金融引締めに転じ、これまでに2回政策金利を引き上げました。

しかし欧州経済の見通しは景気拡大から失速懸念へと大きく暗転しています。

ECBによる利上げは性急過ぎたのでしょうか?

下はZEW景気期待指数です。
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ZEW景気期待指数は現在の経済の状況に関して欧州経済研究センター(CEER)が金融機関、調査会社、市場関係者などに質問票を毎月送り集計したものです。

青がドイツ、赤がフランス、緑がイタリアです。

普通、ZEW景気期待指数は欧州の主要国が大体同じ動きをします。

しかしリーマンショック後の今回の景気後退局面ではドイツの景気だけが飛びぬけて良かったことがこのグラフからわかります。

その理由はドイツは輸出主導型経済であり、去年のギリシャ危機でユーロが比較的安かったことでドイツの輸出企業が恩恵を蒙ったからです。

しかし最近になってこの指数が急激に下がってきていることがわかります。

このドイツの景気期待指数が前月に比べてどれだけ変化したかというのを取りだしたグラフが下のグラフです。
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これを見ると8月に-37とドカ下げを記録しています。

これはギリシャ救済第2段の交渉が難航したこと、米国で連邦債務上限引き上げ問題がデフォルト懸念を呼び起こした事、さらにS&Pが米国の長期ソブリン格付けAAAを剥奪したことなどの一連の政治ドラマの過程で各国政府が現在の経済のかじ取りをしっかりやっていないということが印象付けられたことが深く関与していると思います。

その意味では景況感悪化の直接の引き金になった原因は欧州中央銀行(ECB)の金利政策とは無縁であるともいえます。

下のグラフはドイツのGDP成長をひとつ前のクウォーター(四半期)に比べてどれだけ増えたか、減ったかを示したものです。
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これを見ると2011年第2四半期になってモメンタムが急に失われてしまったことがわかります。

リーマンショック以降の景気回復局面でどの産業分野がGDP成長に一番寄与したかを示したのが下のグラフですが、ドイツは輸出への依存度が極端に高いことがわかります。
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ECBの金利引締めはユーロが高止まりすることを招きました。

これにより去年、絶好調だったドイツやフランスの輸出型企業の業績見通しには翳りが出ています。

つまりECBはユーロ高政策により欧州経済の機関車の役割を果たしているドイツ経済の底力を過信し、金の卵を産む鶏を絞め殺してしまったのです


既に不景気になっている周辺国はECBの利上げで一層景気が悪くなっています。

それは各国の税収の減少というカタチで投資家の信頼の低下を招き、周辺国の国債借り換えコストの上昇をもたらしています。

それではドイツは周辺国を見捨てるべきなのでしょうか?

欧州通貨同盟からギリシャなどの弱い国を叩き出してしまうという選択肢は本当に現実的なものなのでしょうか?

若し周辺国をユーロから追い出すとそれらの国の消費者の購買力は「ドカ貧」状態となり輸入品が買えなくなります。するとドイツをはじめとした輸出型経済の国は痛手を蒙ります。

また弱い周辺国がEUを脱退して、足を引っ張る国が少なくなるとユーロが高くなる可能性もあります。その場合、やはり輸出依存型経済であるドイツは苦しみます。

次に金融システムの安定という観点からも弱い周辺国をユーロから叩き出す事は愚かな決断であることを指摘したいと思います。

もちろんギリシャをユーロ圏から放り出して破綻させるというのは単純に考えればいちばんスッキリしたやり方ですが、それは欧州の銀行システム全体にストレスを与えます。

欧州の銀行は自己資本が脆弱です。とりわけドイツやフランスの銀行に信用不安が走る可能性が高いです。

実際、先週はこの懸念からドイツやフランスの銀行株が急落しました。

下のグラフは銀行のレバレッジを示したグラフですが、一般に数字が大きければ大きいほど危険であると言えます。
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アメリカの銀行がレバレッジを下げているにもかかわらずドイツの銀行のレバレッジはリーマンショックの時とレバレッジが変わっていない点に注目して下さい。

またドイツの銀行の場合、スペインへの貸付だけで自己資本の90%を超えています。またギリシャ、ポルトガル、アイルランドへの貸付も多いです。
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