スティーブ・ジョブズの死をきっかけに「どうして我が国では彼のような人材は登場しないのだろう」という議論が巻き起こっています。これは別に日本に限ったことではありません。

この1日の間に僕が新聞で読み、ラジオで聴いただけでも、ロシアや中国でそういう反省が出ています。

ロシアの場合、いま「ロシアのシリコンバレー」を創る構想が政府の肝いりで進行中です。しかし「仏さまのカタチを造るだけで、魂を入れない結果に終わるのではないか?」と懸念する関係者が多いそうです。

ロシアは数学、コンピュータ・サイエンス、物理学などの人材には実は恵まれています。「ロシアのシリコンバレー」計画を進める人たちが心配しているのはその部分ではないのです。

むしろ彼らが心配しているのはロシア経済にはびこる賄賂体質、あるいはマフィア的な取引の呪縛からハイテク産業も逃れることは出来ないという問題です。

「若しアナタがジョブズのような天才であれば、なにもロシアのような黒い経済のはびこる土地でイノベーションに取り組む必要は無い。サッサとシリコンバレーに移住した方が良いに決まっている」

それがロシアの若者の多くが感じる事なのだそうです。


「ジョブズのような人間は我が国では登場しない」という議論は中国でも出ています。

ウォールストリート・ジャーナルによると中国の場合も人材的にはヤフーを始めたジェリー・ヤンやユーチューブを始めたスティーブ・チェンのように「優秀な人間なら沢山居る」という声が出ています。

問題は中国の学校教育が画一的な思考を強制するようなカリキュラムになっている点です。「学校の先生が先ずやることは皆と違う発想をする生徒の存在に気が付いた場合、その生徒の角を取ることだ」とイェール大学のチェン・ジーウー教授はウォールストリート・ジャーナルに語っています。

また中国の有名な学者、ウー・ジャンシャンは「若しアップルが木に熟した果実ならば、その枝は思想や創意の自由であり、その根は民主主義である。専制的国家では巨大なプロジェクトを集団指導で完成することは得意でも、アップルのような企業は登場しない」と喝破しています。

これに加えて中国でイー・キャピタルという投資銀行を創業したワン・ランは「その木の幹となるべきは知的所有権をしっかり保護する法制度とそれを順守するビジネス社会だ」と指摘しています。