しばらく前の記事で米国の大学での専攻と年収との関係について紹介しました。

その中でエンジニアリング系のお給料が高いことに多くの読者から驚嘆の声が上がりました。

「日本とちょっと勝手が違うな」

そういう感想が多かったです。

ただコメント欄でのやり取りにも出てきますが、この調査はあくまでも学部レベルだと思うので、院卒になるとまた別だと思うのです。

法律の分野ではロースクールに行かないと意味が無いし、金融系はMBAを取得してはじめてキャリアの道が開けるのが実情だと思います。

米国の私学の学費がバカ高いことも指摘しましたけど、その上、ロースクールやMBAということになると親としてはお金が幾らあっても足らない状態になるわけです。

ちょっと話が脱線しますけど、ロースクールに行けば生涯安泰かと言えば、それは違います。

サブプライム・バブルが弾けた時、有名な大手法律事務所がその年の新規採用を大幅に削減しました。これはデリバティブのドキュメンテーションなどの、金融サービスに関係するリーガル・サービスが大手法律事務所のドル箱のビジネスになっていたことが少なからず影響しています。

資産担保証券の発行市場の機能不全で法律事務所も大打撃を受けたのです。
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ロースクールで学ぶ学生はとりわけ高授業料に苦しんでいるので、卒業後、すぐに働き始めて借金を超スピードで返してゆかねばなりません。

ところがどの大手法律事務所も次々に「今年は新卒を取りません」と宣言したので、彼らは大慌てしました。ロースクールを卒業後、直行便で個人破産する人も続出したわけです。

同様の極限的な事情は大きなローンを抱えてMBAを取得した学生にも当てはまると思います。

これは或る意味、「高等教育のカジノ化」であるといえなくもありません。

アメリカの大学教育を受けるコストが高いという話を続ければ、「それでもアメリカにはいろいろな奨学金制度がある」という事を指摘する人が居ます。



これは一見、低所得者層の家庭にもフェアな仕組みのように見えるのですが、現実に奨学金を受けられるか、受けられないかはケース・バイ・ケースで変わりますし、例えば「ハーバード大学とアリゾナ大学の両方に合格した。だけどハーバード大学からは奨学金が貰えなかった」というように経済的な理由で心残りな決断を下さざるを得ないことも凄く多いのです。

さらに文系と理系を比べると理系の方が奨学金が出やすいと思います。これは国や大学が理系の生徒を獲得したいと考えているからです。

これに関してはコメント欄で読者のDaigo Tanakaさんが次のように指摘して下さっています。

アメリカではScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとってSTEMと総称することがあります。アメリカのSTEM教育の問題点は教育研究界で長年指摘されてきましたが、2009年4月27日のオバマ大統領の科学教育へのテコ入れスピーチ以来、教育研究機関等へのお金もずいぶん流れているらしく、議論はいよいよ活発になっています。ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルはSTEM分野が景気に貢献する役割も大きいし、先行する学生も就職に有利になるにも関わらず学問の難解さからドロップアウトや専攻を変更してしまう学生が多いことを紹介しています。これは単にSTEMで無事卒業できた学生とそうでない者の年収の差が出てしまうという次元の話にとどまらず、技術系移民流入の活発なアメリカが自国内でどういう人材をこれから輩出してゆくか、教育水準の底上げをどう図ってゆくかという国家戦略に関する大きな論争から持ち上がってきた話題だということを頭に入れておくことをお勧めします。

シリコンバレーの企業は良い人材なら国籍には頓着しません。彼らは兎に角グローバルな競争に打ち勝ってゆかねばならないからです。

だから技術系移民のビザの問題に関しては枠を制限すべきではないという考えの人も多く居ます。