最初にハッキリさせておきたいのですが、僕はインデックス投資のファンです。

伝統的なロング・オンリー(=買いから入る投資手法)のアクティブ運用をするくらいならパッシブ運用(=インデックス投資)の方が遥かに良いと考えています。

だからここで書く事はインデックス投資をdisることが目的ではありません。

それを断った上で(それにしても僕はインデックス運用のルールを全て守って手堅く投資しているのに、なぜか儲からないよねぇ)と唇を噛んでいる投資家はすごく多いと思うのです。

この素朴な疑問、ないしは実際に読者が日頃抱いている率直なキモチに関し若干の解説を加えようというのがこのエントリーの目的です。

ロング・オンリーの運用は、よく「敗者のゲーム」だと言われます。

「敗者のゲーム」とはアマチュアのテニスの試合のように「より沢山ミスを犯した選手が負ける」という考え方です。

ロング・オンリー投資の場面でのミスとは具体的に:

1.無駄な売買を繰り返し、手数料コストばかりかかる
2.そもそもフィーの割高な金融商品に手を出す
3.相場のタイミングを誤り、怖くなって安値で売ってしまう

などを指します。

インデックス投資を長期に渡って実行すると、これらのミスを軽減することが出来ることはすでに広く受け入れられている定説となっています。

インデックス投資の「インデックス」とは日経平均やS&P500のような株価指数を指します。

乱暴な言い方をすれば「マーケットをまるごと買うやり方」と言い換えても良いでしょう。これを難しい言葉ではベータ(β=市場の動きで説明できる利益)と言います。

インデックスの長期投資では、相場が良い時も、悪い時も、淡々と継続することが大切だと教えられます。そうしなければマーケット・タイミングのリスクを軽減できないからです。

しかしインデックス投資の弱点は「マーケットは長期では右肩上がりである」ことを前提にしている点です。

もちろん、マーケットは長期では右肩上がりだろうことは僕も大筋では同意します。しかし、チャールズ・エリスやジョン・ボーグルなどがインデックス投資を提唱した時代はマーケットにとってとりわけ幸福な時代だったことを忘れてはならないと思います。

下のグラフは米国、日本、ドイツの10年単位でのGDP成長率の推移を示したものです。
a

乱暴に言えば株式市場の超長期でのパフォーマンスは経済の発展に「或る程度」連動します。


だから万年低成長が定着し、今後も当分の間、高い成長が見込めないこんにちの状況では投資成果に対する期待は抑え目にした方が良いでしょう。

次は米国の10年債の利回りの長期でのチャートです。これを見ると1980年代から金利は一貫して下がってきたことがわかります。
b

債券の金利は株式とは「競争関係」にあります。

すると債券の金利が下がるということは株式にとって有利な状況なのです。

つまりかれこれもう30年も株式投資にフォローの風が吹く状況が続いてきたということです。

さらに401(k)の導入による庶民の株式投資の一般化や民営化ブーム、法人税の軽減など、株式市場を支援する材料には事欠かなかったことに投資家は注意を払うべきです。

当時の政治の雰囲気を伝えるものとして、例えばマーガレット・サッチャーの火焔を吹くような市場擁護に関する動画を見て下さい。



いまこれほどの情熱でもって市場や企業を擁護してくれる政治家が世界に居ますか?

つまり株式を巡る世間のムードはエリスやボーグルの時代とは180度違うのです。

このような「株式の大衆化」ブームで、例えば英国の世帯の株式の保有は1980年代初頭の僅か7%から1990年頃には14%にも達したのです。

「上げ潮は全ての舟を押し上げる」と言いますが、「ただインデックスにさえ投資しておき、ミスを最小限に止めるだけで、それなりの投資成果が得られた」のは、このような時代背景に依るところが大きいのです。

翻って現在の投資環境を考えれば、世界的にベビー・ブーマーはリタイアの年齢に達しますので、今後株式資産の取り崩しはどんどん加速すると思われます。

さらに昔のような経済成長が期待できるか?と言えば、迷わずYES!と言えるような環境には無いと思います。

インデックス投資はあくまでも「相対リターン」、つまり「下手なアクティブ運用の運用者には勝てる」という手法であって、「絶対リターン」を確保するのが目的ではありません。

「絶対リターン」とは、マイナスにならないことに努める投資手法です。それを難しい言葉ではアルファ(α=市場の動きでは説明できない、運用者の腕前のこと)と言います。

運用の世界にはβの世界とαの世界があります。

βの世界だけが投資の全てだと思うのは世間知らずというものです。