ヨーロッパを旅行したことのある人ならトーマス・クックという旅行のブランドをご存じだと思います。

トーマス・クックは1841年に英国のレスターからラフバラーに570人の団体旅行客を蒸気機関車で運びました。それらの乗客は禁酒主義者たちの集いに出席するためこのツアーに参加しました。ツアー料金は往復の運賃を含めてひとり1シリングだったそうです。

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これが団体ツアーのはしりだと言われています。

その後、トーマス・クックは1851年のロンドン万国博覧会に16万人の団体ツアー客を送り込むことで団体ツアー業者としての地位を固めます。

さらにクックは「ヨーロッパ一週旅行」や「エジプト旅行」などだんだん野心的なツアーを企画してゆきます。

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そして1872年には222日をかけて世界を一周する「世界一周ツアー」を世に問うわけです。

クックの功績は団体ツアーにとどまりません。

トラベラーズ・チェック(=これは後発のアメリカン・エキスプレスのブランドネームが旅行小切手の呼称として定着しました)を最初に編み出し、トラベル・ガイドブックを出版するなど、いろいろなイノベーションを起こしたのです。



このように由緒正しい旅行ブランドのトーマス・クックですが最近の経営状態は良くありません。

今日、同社は銀行団に対してクリスマス・シーズンを乗り切るためのつなぎ融資の交渉を開始したと発表しました。

同社の資金繰りがのっぴきならない状態になっていることを悟った投資家はトーマス・クック株に売りを浴びせ、同社株は-73%の暴落となっています。リーマンショックの前は300pで取引されていた同社株ですが、今日は一時9.3pの安値を付け、事実上、倒産を織り込んだ水準となっています。

来年にはロンドン・オリンピックを控えているというのに、何故同社の経営はここまでおかしくなってしまったのでしょうか?

その一つの原因はインターネットの普及で旅行代理店が必要でなくなった点にあると思います。

また「アラブの春」でチュニジアなどへの旅行客が減った事、最近ではタイの洪水でロシア人のタイへの渡航が激減したこと、欧州周辺国のデモ行進でギリシャやスペインなどが騒然としており観光客の足が遠のいた事などが原因です。

クリスマスの旅行シーズンはツアー業者にとって売上を稼ぐ大事な時期であると同時に資金繰り的には手元のキャッシュがカツカツになる苦しい時期でもあります(=チャーター機の運営など資本集約的なオペレーションがあるため)。

果たしてトーマス・クックがこの苦境を乗り切れるかどうか、引き続き注目したいと思います。