数日前にリークされていた通り、欧州連合(EU)の行政部門を司る欧州委員会(European Commission)がユーロ共同債の導入を提案しました。

ユーロ共同債とは欧州の単独の国が国債を出す代わりに、EU圏全体として債券を発行することを指します。もっとカンタンな言い方をすれば米国財務省証券(=USトレジャリー)のユーロ圏版だと思えば良いでしょう。

欧州委員会はユーロ共同債を出す際、3つのシナリオを描いています。なぜ3つの選択肢を提示したかといえばユーロ共同債の案を各国の代表が自国に持ち帰った場合、国内世論的に通りやすい案と強い反発を招くと考えられる案があるからです。

このうち最も反発が強いだろうと考えられる案はユーロ加盟国の国債の発行を全部欧州連合に一本化してしまう方法です。

純粋にマーケットの視点からすれば、これが最も強靭で人気が出やすいアプローチだと思います。

その理由はユーロ圏全体で考えると政府の借金はアメリカや日本より少ないからです。
1

今後、借金がどう増えるか?という増加率で考えてもユーロ圏は2009年から2012年までに13%の増加が見込まれているのに対し、米国は23%も借金が増える予想になっています。

これまで欧州各国は各個に国債を発行してきました。それはこれらの国債が市場規模の面で小さすぎることを意味します。すると投資家の側からすれば、「購入しても良いし、しなくてもよい」という選択肢があったわけです。

ひるがえって米国債や日本国債の市場を考えた場合、それらのマーケットでの主要な投資家は「僕は買いたくない」という選択肢を事実上、与えられて来なかったのです。なぜならそれらの資産カテゴリーは巨大で、代替できるものが無かったからです。

中国政府が米国の財政運営にいろいろ難癖をつけながら、それでも米国債の購入をストップすることが出来ないのと同じ理由です。


つまりユーロ共同債は先ずそういう存在にならないといけないのです。

今回、欧州委員会が示した3つのユーロ共同債の案のうち、比較的導入に際して世論の反発が少ないアプローチはいずれもユーロ共同債の商品性を「コンパートメント(個室)化」しています。

これでは折角ユーロ共同債という体裁を取っても、投資家の立場からすれば「どうしても喰わざるを得ない据え膳」的な強制力は出ません。

いまのところ関係者は「どうせユーロ共同債をやるなら、いっそのこと全部欧州連合に一本化する、最も実現しにくいアプローチに敢えて挑戦してみよう」と考えているようです。

なお、今日ドイツ国債の入札で「札割れ」と呼ばれる現象(=不人気で売れ残りが出ること)が起きました。札割れや欧州株式市場の大暴落はユーロ共同債のディスカッションをスピードアップするのに誠に好都合な展開です。

メルケル首相を含めて欧州の政治家のトップにはそのような口には出せない「暴落願望」があることを投資家はそろそろ気付くべきだと思います。