暫く前に伝説の投資家、ウォーレン・バフェットがIBMにデカい投資を実行したことが明らかになったことを紹介しました。

アメリカのバイサイド(機関投資家)コミュニティーの、この手口に対する反応は「百年の恋も醒めた」というコミカルなものから「じいさんもたいへんだな」という同情的なものまでいろいろありました。

いずれにせよ、共通したのは日頃バフェットが堅持してきた投資理念とは余りに矛盾するその手口に「目が点になった」という素直な驚きを誰もが感じたという点です。

その矛盾ですが、まずバフェットは「わからないものには投資しない」という信念を何十年も持ち続けてきました。

チョコレートやソーダ水や自動車保険などの比較的シンプルな会社に投資しても、ちゃんと凄いリターンを得ることが出来る、、、その愚直さや魔法性が民話的ヒーローとしてのバフェットのオーラの源泉だったわけです。


ところが「ハイテクはわからないから、手を付けない」と言っていた本人がドカンと過去最大のポジションをIBMにこしらえたわけですから誰もが「えっ?」と思うのは仕方ありません。

次にバフェットといえば割安株投資の大御所ですけど、現在のIBMの株価水準を「割安だ」と言うのは苦しい説明だと思います。もちろん「成長に比べれば割安だ」という理屈を当然こねると思うけど、せめて押し目で拾って欲しかった。

これが例えばヒューレット・パッカード(ティッカー:HPQ)なら元CEOのB級映画女優とのセクハラ疑惑などの悪材料が出ているので、勇気が無ければポートフォリオには入れられません。

でもIBMの業績は順風満帆に推移してきており、そこには投資に際して逡巡したり葛藤する要素は全く無いのです。

そういうMoMo筋の人たちからチヤホヤされるような投資対象(=けっして貶しているわけではありません)にバリュー投資の大御所が徘徊しているから説明がつかなくなるわけです。

これはちょうど敬虔な神父さんがソープから出てくるところを信者の人たちに目撃されたようなものです。

ヘッジファンドの草分け的存在であるマイケル・スタインハートは「バフェットは煙幕ばかり張っている。いずれ化けの皮が剥がれる」とバフェットをコケコケにしていますが、確かに投資対象の企業には情報開示や透明性を求める一方でバークシャー・ハサウェイではアナリストの訪問を受け付けない(=最近ようやく改善しました)など、煙幕を張っているとしか思えない言行不一致な行動というのは昔から気にはなっていました。

また後継者問題に関しては昼メロ的なブザマなドラマが延々と繰り返され、しっかりとした運用組織、あるいは企業風土というものを感じさせません。

今回の一件は「引潮になれば、誰が水着を着ずに泳いでいたかわかる」というのが口癖のバフェットに対して、(ひょっとしてふるちんで泳いでいるのはバフェットなのでは?)という疑惑を抱かせるのに十分な、インパクトのあるニュースだったと思います。