ひとつ前のエントリーがいささか言葉足らずだったので、少々付け加えておきます。

リーマン・ブラザーズが倒産したとき、ゴールドマン・サックスも手元流動性の問題に直面し「あわや」という場面がありました。

危機打開のためゴールドマンのロイド・ブランクフェインCEOはウォーレン・バフェットに資金援助を申し入れます。「転換優先株を買って欲しい」という懇願の電話です。

バフェット:「いまデートの最中や。いそがしいねん。」

ブランクフェイン:「こ、これはお取り込み中のところ失礼しました。」

バフェット:「うん。いまワシの孫たちとデイリークインでアイスクリームしゃぶってんねん。」

ブランクフェイン:「、、、(絶句)、、、」

デイリークインというのはマクドナルドと同じような、大衆的なファーストフード兼アイスクリーム屋チェーンです。

なるべくゴールドマンにとって有利な条件で出資を仰ごうと会議室に精鋭を集めてバフェットとの電話交渉に臨んだブランクフェインのチームは孫とのクウォリティ・タイムを過ごしているバフェットの邪魔をしてしまった間の悪さにショックを受け、一瞬ひるみます。

バフェット:「いまファミレスやから、こまかい数字はわからん。でもクーポン10%なら買ってやっても、いいで。それがいやなら、もう電話せんといて。」

この一言でゴールドマン陣営は総崩れになり、すごすごとバフェットの提示した条件を呑みました。

つまり清廉であることはチカラなのであり孫とファミレスでアイスクリームをしゃぶることをこの世の無上の喜びとする人とどんなに融資条件を争っても初めから勝負にならないのです。


我々がバフェットに痺れるのは、彼の持つこういう部分なのです。

しかしそのバフェットは最近、必ずしも清廉とは言えなくなっている場面もたびたび見せています。

例えばルブリゾルという特殊化学会社を買収したときにはバフェットの子分のひとりでルブリゾル買収をバフェットに進言したファンドマネージャーが個人のへそくり勘定でルブリゾル株を先回りして買っていたことがわかっています。

もちろん、そのファンドマネージャーがバフェットにルブリゾルの買収を進言したとしてもバフェットがそのアイデアを採用するかどうかはわからないのでこれはインサイダー取引にはならないといういささかムリな解釈も出来ないことはありません。

でも例えば証券会社のトレーダーは手張りしている銘柄に客注が来たときは手張りのポジションをマル(=キャンセル)にしなければいけないのは業界の慣習だし、ファンドマネージャーも個人のへそくり口座の注文を先に出し、その直後に大口のファンドの注文を出すことはご法度です。

それがバークシャー・ハサウェイでは許されるというのはダブル・スタンダード以外のなにものでもありません。

今回バフェットが大きなポジションを取ったIBMはダウ工業株価指数の12%を占め、一番ウエイティングの高い銘柄です。因みに第二位はシェブロンで6.2%です。このことからもいかにIBMひと銘柄の重さが重要かわかると思います。

だから例えば我々がCFDでダウ30をショートした場合、ポジションを建てている間中、IBMのティックからは目が離せないのです。

このように日頃トレードしている人ならIBMの指数構成銘柄としての重要性は誰もが痛いほど認識しているわけで、このところダウに大負けしているバフェットがIBMを購入したのはウインドウ・ドレッシングだと言われても仕方ないのです。

倫理の面でも、アクティブ運用の堅持という面でも「李下に冠を正さず」というルールが崩れてきており、すがすがしさが失せてしまった、、、これこそが今のバフェットの抱えている問題なのです。