金融版シェンゲン協定(Schengen Agreement)という概念が浮上しています。

これはギリシャやイタリアのようにEU内のある国の国債の人気が離散し、その結果、自力で借金の借り換えを出来なくなった場合、他のEU加盟国がケース・バイ・ケースで各個に相互救済協定を結ぶというコンセプトです。

なお現段階ではこの概念はきわめてぼんやりとしたブレーンストーミングの段階であり、今週のEU蔵相会談などでより具体像が詰められてゆくものと思われます。

シェンゲン協定とはEUの二国間でのパスポート検査廃止の取り決めであり、ベルギー、フランス、ルクセンブルグなどの隣接する国々同士の間で、そもそも昔から検問という行為が定着していなくて自由に人々が行き来している現状を追認するカタチで「それじゃパスポート検査は無しということにしましょう」ということを決めた協定です。

これは欧州の基本条約からみると例外的な存在になりますが、もともと欧州基本条約より先行して存在した人々の慣習なので、なし崩し的に例外が認められたのです。

さて、一刻を争う欧州金融危機への対応に話を移すと、財政主権の問題をどうするか?というテーマにいやでも取り組まないといけない局面にまで今のヨーロッパは追い詰められています。

思い出して頂ければ現在、欧州には中央銀行はありますが欧州財務省に相当する機関はありません。

だからお金を資本市場から借りることはおのおのの国が各自フランス国債やイタリア国債を出す事でやっているのです。

ドイツがイタリアに直接お金を貸したりすることは現在の欧州憲法では出来ないタテマエになっています。

しかし現実にはドイツがギリシャにお金を貸さないとギリシャがデフォルトして、それが原因で欧州の民間銀行が次々に経営難に陥るというリスクが眼前に迫っているわけですから何かやらなければいけません。



これまでは欧州金融安定ファシリティ(EFSF)というファンドにお金をプールする方法、欧州中央銀行(ECB)が各国の国債を買い支える方法などが考案されてきました。

もちろんそういう方法でも良いわけだけど、そうやってドイツがギリシャなどの尻拭いをした場合、ドイツとしてはどうしても気になる問題が残ります。

それはいつまでたってもこれらの問題国の国内政治が愚図愚図していて断固とした財政改革を出来ないで居るという事実です。

放蕩息子が放蕩息子のままで改心していないのに、なりゆきに任せてお金を与え続けるとドイツもズルズルと泥沼にはまってしまいます。

だからドイツとしては自分自身の保身のためにも「チョッと言わせて貰って、いいかね?」という発言力を持つ必要性をひしひしと感じ始めているわけです。

しかし「それじゃ一気に欧州財務省を打ち立て、ユーロ共同債を出そう!」ということになるとEU加盟27カ国の承認が必要になります。それぞれの国の議会がそれを承認しないといけないわけですから、これはもう不可能に近い苦行になるわけです。

そこで「抜け道」として目を付けたのが、過去に欧州の基本条約の埒外に置かれた「特例」のケースを参考にするというやり方です。(EUの官僚達はこういうアイデアを考えるのが凄く上手いです!)

そこで「これは、どうかな?」と目をつけたのがシェンゲン協定というわけ。

金融版のシェンゲン協定を作ろうという気運が俄かに高まっているのは、そういう事情です。

さて、金融版シェンゲン協定ならば最低、9カ国が合意するだけで特例が認められます。

すると例えば「イタリア=ドイツ間だけでは相互に金融支援し合うと同時に予算面でもお互いの口出しを許す」というような例外を既成事実として次々に作ってゆくことが出来るわけです。

果たしてこのトークがどれだけ真剣なものなのかは僕にはわかりません。でも何かが動き出している事だけは確かです。