「世の中、タイミングが全てだ」というのはウォール街でよく耳にする格言です。

MFグローバルが早すぎたイタリア国債への投資で倒産した後、その「倒産処分セール」がありました。

大半の機関投資家はMFグローバルを率いる元ゴールドマン会長のジョン・コーザインの失敗を目にして(くわばらくわばら。コーザインですら上手くモノにすることができなかったイタリア国債なんかに、うっかり手を出すものじゃないな)とこの機会をパスしました。

しかしジョージ・ソロスは(それじゃ、それ、貰っておこうか)と20億ドル相当分を購入したのだそうです。

ジョージ・ソロスは口では「ユーロが崩壊する」とか言っておきながら、くるっと考えを変えてしっかりイタリア国債を仕込んでいるあたり、やはり老獪です。

よく「人の言っていることを聞くのではなく、やっていることを観察しろ」と言いますが、これなどまさしくその例ですね。

ところでイタリア国債は最近の欧州の債券の例にもれず出来高が細っています。

場合によっては往時の6分の1くらいの流動性しか無くなってしまったケースもあります。

するとソロス・ファンドのような大きな投資家が自由に出たり入ったりするような流動性が枯渇しているわけです。

これはゴキブリホイホイに喩えることが出来るでしょう。

つまり一回、足を踏み入れてしまうと、二度と出れないわけです。MFグローバルのジョン・コーザインもこれでヤラレてしまったわけです。

それではソロスは大丈夫なのでしょうか?

それは我々のような下々の人間が心配するには及ばない事なのかもしれません。

なぜならソロスが購入した債券の大半は来年末までには償還する、比較的短期のものばかりだからです。

言い換えれば、ソロスは後1年くらいはヨーロッパの財政統合の材料でイタリアはなんとかやりくりできると考えているわけです。

(ソロスにはなぜ今回のEUサミットで財政統合の合意が出来る事がわかっていたのだろう?)


この質問に対する回答は簡単です。

なぜなら今回押し進められている財政統合は「紙切れ一枚」をリスボン条約に添付するだけで、条約改正を伴わずOKだからです。言わば条約の「抜け道」なのです。

ドイツのメルケル首相は「将来、ドイツに助けて貰おうと思っている人は、約束は守りますと自ら誓ってください。その誓約書を入れた人だけにお金を貸します。」と要求したわけです。

これはリスボン条約全体の修正ではなく、あくまでも個々の国の自発的な申請です。だからルール違反ではないのです。

またそういう誓いをたてた国が目標を守れなかった場合、自動的に一律予算カットというサーキットブレーカーが働く仕組みを盛り込んでいます。これはアメリカの先例のパクリに他なりません。

以前にも書きましたがドイツは各国の財政に対し上に書いたような歯止めをかけることさえ実現すれば、お金を融通することにはやぶさかではありません。

これはちょうど中国が日頃アメリカの悪口をさんざん言いながら、それでも米国財務省証券の購入をストップしないのと全く同じ理由です。

ドイツの輸出はユーロ安になるとぐいぐい伸びる構造になっています。すると税収も伸びます。つまりデットサービス(借金の利子を支払い、元本をちゃんと返済すること)能力は輸出競争力の維持と密接に関わっているわけです。

一方、ドイツの内需は硬直的で、かつ慢性的にひ弱です。

ドイツがユーロから離脱する道を選ばず、より周辺国との財政の緊密化を図る事で問題解決に乗り出したのはこのようなロジックによります。