ピーター・リンチの株で勝つ―アマの知恵でプロを出し抜け
ピーター・リンチの株で勝つ―アマの知恵でプロを出し抜け
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★★★☆☆評者:広瀬隆雄

『ピーター・リンチの株で勝つ-アマの知恵でプロを出し抜け』は1987年のNY株式市場の大暴落、いわゆる「ブラック・マンデー」の後に出版された初心者向けの投資本です。

3・11の東日本大震災や9・11の同時多発テロなど、重大な出来事の後では人々はある種の放心状態に陥ります。

1987年のブラック・マンデーも投資に関わる人々にとっては呆然とさせられる事件で、本書は冒頭でこのエピソードに触れています。

リンチはどうやって平常心を取り戻したのでしょうか?

この本はその事に関する記述から始まって、毎日の暮らしの中から身の回りの投資チャンスを見つける投資アプローチの話へと発展してゆきます。

その地に足が付いたリンチの語り口は読む者のキモチを静める、ある種の心地良い効果を持っていたと思います。


最近の例で言えばギリシャ問題に端を発したユーロ危機で「すわユーロ崩壊だ」とか「アルマゲドンだ」とか皆、大騒ぎしています。

そしてあたかも誰もがユーロ問題の専門家になったかのように難解な議論を振り回しています。

でもEUは1992年にすでに一度「崩壊」しており、その後しっかり復活したという事実は皆、都合良くすっかり忘れているわけです。

投資家はいま自分の眼前に展開している事象だけが最も重要な「前代未聞の大事件だ」と大袈裟に考える傾向があります。

こうしたセンセーショナルでヒステリー的な投資家の態度はその陰で「ごっつあんです」という投資機会を大量に創出する結果になります。

その意味で現在の世界のマーケットは投資チャンスに溢れているし、いまこそ本書を読み直す意味があると思うのです。

さて、87年の大暴落と言ったところで未だその時は生まれてなかった読者も多いと思います。

だからこの本の中に出てくるザ・リミテッドやラキンタ・モーターインなどの事例を読んでもぜんぜんピンと来ないと思います。

僕はこの本に書かれている事例はほぼリアルタイムで体験しました。

だからジーナ・デービスが未だ女優デビューする前に下着モデルをやっていた頃の「お宝写真」(笑)が載っているビクトリア・シークレットのカタログをトレーディング・ルームで回し読みしたり、ザ・リミテッドがそのビクトリア・シークレットを買収して、最初にマジソン・アヴェニューにブティックを開いた時、機関投資家をそのフラッグシップ・ストアに集めて会社説明会を開催した記憶が本書を読むと懐かしく蘇ってきます。

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でもハッキリ言ってそのようなセピア色の思い出は今の投資には役に立ちません。むしろ今の若い読者がやって欲しいことはこの本に書かれている考え方のヒントを盗むということです。

つまり自分の日常生活を客観的に振り返って自分の行動を臨床的に分析してみるわけです。

例えばあなたがこれまで使っていた東芝のノートブックをアップルのマックブックに換えたのなら、東芝の株を抱えていては駄目です。アップルの株に乗り換えて下さい。

若しミクシィよりフェイスブックをやっている時間の方が長いのならばミクシィの株を持ち続ける意味は無いでしょう。

こうしたユーザー目線の投資を僕は今でもしっかり実践しています。