相場師 (徳間文庫)
相場師 (徳間文庫)
クチコミを見る
★★★★☆評者:広瀬隆雄

ネットを見ていると証券会社の廃業がチラホラ話題に上っています。

日本だけかと思ったらブルームバーグにはロンドンの株式ブローカーも白旗を上げるところが出ていると書かれています。

その記事の中で来年CEOを退任するパンミュア・ゴードン証券のティム・リネーカーのコメントが引用されており、「活動は枯渇しており、それが一部の会社が白旗を掲げている原因だ」としています。

パンミュア・ゴードンといえば英国のデビッド・キャメロン首相の一族の家業であり、確か日露戦争前後の日本の外債発行でもシ団入りしていた老舗です。

今は世界的に証券会社のファンディング事情が苦しいわけですが、こういう出来高が細った局面の後で活況相場が来ると証券会社の台所は火の車になります。

米国の場合、顧客注文(エージェンシー・オーダー)の大きさに合わせて、それに相応する証券会社の自己資本を確保しておかなければいけません。


そんな事はメガバンク系投資銀行ではそもそも問題にすらなりませんけど、ブティック系証券が大口のプログラム注文やブロックトレードを請ける時はFEDのレギュレーションにひっかかる恐れがあります。僕もそんなシチュエーションで肝を冷やした経験が何度かあります。

そういう証券会社の裏事情を描いた作品が清水一行の『相場師』です。

主人公の駒田周平は北浜の場立ちから身を起こした叩き上げの相場師です。周平の財力を当て込んだ創業一族が周平に中小証券の経営を譲るわけですが、長引く弱気相場の中にあって経営は行き詰ります。

もちろんこの作品に書かれているような昭和の時代の証券会社の経営実態と現在の証券経営は違うと思います。でもマクロ経済のトレンドや業界の直面するシクリカリティ(市況性)には学ぶべきものが多いのではないでしょうか?

駒田の経営する弱小証券が廃業記者会見を行っているその時に公債政策発表で奔騰相場が始まってしまう本作のラストは圧巻。