ウォールストリート・ジャーナルに「大学費用補助金を獲得するためのダンス(The College-Aid Shuffle)」という面白い記事が掲載されました。(この記事はペイウォールの向こう側なのでリンクは貼りません)

アメリカの受験生やその親にとってこれからはハラハラするシーズンです。なぜなら大学が合格通知を学生に送り始める季節だからです。そのピークはたぶん3月頃だと思います。

さて、受験生が大学から合格通知をもらうと日本では「○○ちゃん、よかったね。今日は家族でお祝いしよう!」ということになるわけですけど、アメリカでは必ずしもそうなりません。

大抵の場合、家庭の雰囲気は悪くなります。

これはどうしてかと言えばアメリカは大学の費用がとても高く、折角、受験生本人は大学から合格通知をもらってもその後に来る大学費用補助金の提示額が少なければ家計の理由で進学を諦めなければいけないケースも続出するからです。

記事中、コストが高い大学の例として:

セラ・ローレンス・カレッジ $59,170
ニューヨーク大学 $56,787
コロンビア大学 $56,310

などが挙げられています。

なお蛇足ですがアメリカの、とりわけニューヨークのような家賃の高い都市にある大学の場合、新入生は一部の例外を除いて全寮制です。ここで言うコストには寮費とカフェテリアなどの食事代、さらに書籍代などが含まれていると思います。

コストの高い大学のリストの上位にニューヨークを本拠とする上記の3つの大学が入っているのは授業料本体ではなく寮費が高いからです。でも上に書いたような理由で寮費と授業料が不可分の関係にある以上、ぜんぶをひっくるめて議論しなければ意味がありません。

さて、WSJの記事に戻ると受験生本人が合格通知をもらった後で大学費用補助金(Financial-aid)の審査が行われます。

受験生の親は税金の申告書類、貯金通帳の内容、持ち家の有無、家族構成、家族の中に医療費の負担になる病人がいるか?など、ありとあらゆる家計の情報を提出しなければいけません。

普通、大学費用補助は援助を必要とする学生が優先されます。このことを英語ではneed-based financial aidといいます。

しかし大部分の家庭は「ウチは中の上くらいの収入だけど、やっぱり大学の費用はとても捻出できない」という状況に陥ります。なぜなら大学生ひとりを送り出すだけで4年間に1,750万円かかるからです。

2から3人の兄弟が居る家庭では「お兄ちゃんが私学に進学したので、僕はもうアイビーリーグには行けない」という事はフツーに起こります。

さて、大学費用補助金(フィナンシャル・エイド)の他に奨学金(スカラーシップ)というのもあります。これはその学生が何を専攻するか?などの選択に影響されやすいと思います。


今日書いていることは全てケース・バイ・ケースなので個々の事情が決め手になりますが、一般論で言えば文系は奨学金を獲得しにくく、理系は獲得しやすいです。別の言い方をすれば大学が獲得したい、天文物理学や数学を専攻する学生には援助が出やすく、学生の間で人気のあるやさしい学科の場合、競争が激しすぎて援助を獲得出来る確率が下がるのです。

WSJの記事によるとハーバードやプリンストンなどの難関校は大学学資補助金を貧しい家庭だけでなく中流の家庭にも拡大することを実施しています。

さらに同記事は「収入をなるべく先送りし、費用をなるべく前倒しで計上し、資産を家計の外へ移すなどの方法でビンボーに見せることは効果がある」としています。

大学費用補助金を受けようとする家庭はファフサ(FAFSA: Free application for Federal Student Aid)と呼ばれる申請書を提出します。これは連邦政府からの奨学金を決める際に使われる情報を書き込むフォームです。

私立大学もこのファフサに記載された情報を参考にします。

さらに私立大学の場合、カレッジ・ボード(College Board)のCSS/Financial Aid Profileという申請書をベースにしてどれだけ補助金を出すかを決めます。

このような手続きを経て大学合格者の親元にそれぞれの大学からどれだけ補助金が出るかの通知が来るのは確か5月頃だと思います。そこには「10年のローンを組めば、補助金を含めたアナタの月々の支払額は○○ドルです」というオファーが記載されています。

これを見ると自分の子供をその大学にやることが出来るか、出来ないかはたちどころにわかるわけです。

「ハーバード大学とカリフォルニア大学リバーサイド校の両方に合格したけど、ハーバードからの提示額はウチではムリなので入学を諦め、UCリバーサイドにした」というような残念なケースはザラにあります。