CNN MoneyがFacebookの幹事獲得を巡って投資銀行間でフィーの値引き合戦になっていると伝えています。

通常、アメリカのIPOは調達金額の7%が引受手数料として差し引かれます。だから例えばIPOで1億ドルの新株を売った発行企業が実際に手にするのは9,300万ドルなのです。

この7%というスプレッドは投資銀行にとってたいへんオイシイ比率であり引受け案件をどれだけ獲得できるかがブローカレージのビジネスの採算性に大きく影響してきます。

逆に言えばIPOする企業や投資家にとって7%分だけ損するわけです。しかし実際には値決め価格でIPOを買った投資家がいきなり7%安い値段で取引開始になるというわけではなく(*)、企業のバランスシートに載るキャッシュが1億ドルではなく9,300万ドルになるだけなので、投資家からすると「目に見えない」ディスカウントということになるのです。

往々にして投資家がこのフィーの大きさに気が付かない理由はここにあります。

さて、IPO案件が小規模の場合は7%のフィーはウォール街のカルテルで絶対に値引きしない暗黙の協定がありますが、これが民営化の案件や大型のIPOなどになると「ウチに幹事を呉れたら、値引きします」という提案をする投資銀行が出てきます。

実際、8億ドルの調達をしたグルーポンは6%のフィー、10億ドルを調達したジンガは僅か3.2%のフィーしか払っていません。(ジンガのCFOは元JPモルガンの男でウォール街の駆け引きに明るいので、思いっきり買い叩いたというわけです。)
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なおグーグルのIPOの際のフィーが2.8%と破格に安いのはグーグルがブックビルディングではなくダッチオークション(入札)方式でIPOしたからです。

そもそもダッチオークションでは「この値段でゼッタイ売り切ります」という約束(=これをアンダーライティングといいます)をしないので、投資銀行はリスクを取らないわけです。リスクを取らなければ報酬を値切られるのは当たり前。そういう理由でグーグルのフィーは安かったのです。

さて、Facebookの場合、CNN Moneyの伝えるところではフィーは1%程度になるのではないか?と言われています。若しそれが事実ならゼネラル・モータースのIPOの0.75%というスズメの涙のようなフィーにも伍する、安いフィーということになります。

ゼネラル・モータースのIPOの際は(どうせウチは政府から嫌われているので主幹事はとれまい)と考えたゴールドマン・サックスがライバル虐めの意図でわざと思いっきり安いフィーを提示した経緯があります。また民営化などの、政府が絡むディールでは一般にフィーが安いのが通例です。

ただフェイスブックの場合、別に民間企業ではないわけですからそこまで値引きする必要は無い筈です。ひとつの可能性としては以前にも書きましたがFacebookがグーグルがそうしたようにダッチオークション方式のIPOを採用した場合、これは当然、上に書いたような理由でフィーは安くなるわけです。

(*)例外としてクローズド・エンド・ファンドの場合、場でつく株価がNAV(純資産)に限りなく近づくため、クローズド・エンド・ファンドのIPOは往々にしていきなり7%安で寄り付く場合が多いです。この仕組み上の不利が原因でETFが登場して以来、クローズド・エンド・ファンドは事実上、過去のものとなりました。