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FacebookがIPOするとフェイスブックの社員の多くが億万長者になります。

そのうちの何人かはエンジェル投資を始めることは間違いありません。

これから起業しようと考えている皆さんにとって、現在のシリコンバレーの起業環境はどうなのでしょうか?

先ず今は昔より遥かに安上がりにネット企業をスタートアップすることが出来るという点に注意を払う必要があると思います。

今はAWS(Amazon Web Services)などのクラウド・ベースのアウトソーシングが出来るので、自社でサーバなどを揃える必要はありません。これはスタートアップ・キャピタルが少なくて済むことを意味します。

実際、1990年代は300万ドルくらい用意しなければスタートアップ企業がアイデアを製品化したりネットを通じてサービス開始することは出来ませんでした。

今はそれが10万ドル以下に下がっていると思います。

それは逆に言えば「ボクもいっちょう腕試ししてみよう!」と考える元気な若者、つまり起業家(アントレプレナー)の数が激増したということも意味します。

その分、競争は激しくなったし、陳腐なアイデアで走り出してしまうベンチャーも多くなったのです。

その一方で従来のベンチャー・キャピタル(VC)のビジネス・モデルは瓦解寸前です。VCにはデュー・デリジェンスを可能にするための社内のノウハウの維持の為、固定費が掛ります。

このオーバーヘッドに見合っただけのリターンを得るためにはある程度の規模の投資対象でなければいけないわけですが、上に述べたような理由で小額の資金でスタートアップ企業がどんどんサービスインしてしまうため、VCのインフラストラクチャは空回りしはじめています。

クライナー・パーキンスやモーア・デビダウなどの老舗のVCが最近鳴かず飛ばずなのはこのような齟齬によるところが大きいです。

また大半のスタートアップ企業は途中でサービスの内容やビジネス・モデルを大修正します。そのことをピボット(Pivot)と言います。

代表的なピボット例ではツイッターやグルーポンが挙げられます。

すると起業する際に構想した製品やサービスのイメージを如何に堅持するかということより、波瀾万丈のベンチャー・ライフを逞しく生き抜けるだけの気力があるか、或いは柔軟な思考が出来るか?という資質が重要になってきます。

最近の投資家はそのへんのところに最も注意を払って投資先を選びます。

このためシード・ラウンドのデリジェンス(事前調査)は以前よりずっとスピード審査になっています。

レストランで紙ナプキンにビジネスのアイデアを書きつけて即出資決定、、、そんなノリです。

エンジェルの存在が重要になってきたので、VCはスクイーズされています。

また昔は老練なベンチャー・キャピタリストが「あそこへ行けば誰それがその専門家だ」という風に頭の中にシリコンバレーの人脈図が入っており、そのコネクションの価値は絶大だったのですが、今はそれは崩れつつあります。


別の言い方をすればディールのソーシングの仕方や人材のソーシングの仕方が変わったというわけです。

また以前はベンチャー企業が株式公開に漕ぎ着けるまでに何回か資金調達をする必要があったので「これは第何回目の資金調達」というカタチで若い企業の成長の段階に合致した特別の技能を持ったVCがそのノウハウを買われてラウンドに参加するということがありましたが、今はそのようなラウンドの定義が曖昧になってきています

さらにピボットするのが当たり前になってきているのでオリジナルの起業コンセプトから逸脱しても、いろいろ試せる自由を保障することが極めて重要となっています。これは堅苦しい形式重視の海外のVCはとりわけ不得意とする事です。

むしろ米国の起業家やエンジェル投資家は「時間の方がもっと大事だ」と考えます。若し(これは上手く行ってないな)と感じたら、ぐずぐず時間を浪費せずにサッサとピボットしてしまうわけです。

起業家の立場からすればシードマネーを受ける際のバリュエーションはかなり上昇しました。実際、2005年から2011年の間にシード・ラウンドの評価は+50%程度上昇していると思います。

言い換えれば自分の持ち株比率を大きく下げなくても、サービス・ローンチに必要な外部資金を調達しやすくなったというわけです。

しかし現在のシリコンバレーでいちばん希少となっているのはツイッターやグルーポンのような新しいアイデアです。これこそが希少資源なのです。

だから当たるサービスやアイデアに到達できないベンチャーはグルグル堂々巡りのようにピボットし続けるし、逆に当ったサービスを打ち出した企業の評価はぐんぐんウナギ登りに上昇します。

この結果、Aラウンドは5年前に比べて+100%、プリIPOは+1000%という破格のバリュエーションがつくことも珍しくないのです。

もちろん、その陰で大量のベンチャーが蚊取り線香を嗅いだ蚊のようにポトポト墜落していることは言うまでもありません。