最近、ある学生(もちろんアメリカ人だけど)から「投資銀行に勤めようかと思っているのだけど、どうでしょう?」という進路相談を受けました。

この学生は僕がむかし投資銀行に勤めていて、新人教育を担当していたことを知り合いから聞いてコンタクトしてきたのです。

そこで僕が最初に説明したのは、「今はギョーカイにとって結構たいへんな時期だよ」ということです。

下は投資銀行の「メシのタネ」として最も重要な三つの分野(すなわちM&A、FICC、エクイティ)における各社のパフォーマンスを示したグラフです。(なおこのグラフは網羅的ではありません。)
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収入は軒並みダウンです。


僕:「というわけで今は各社とも相当ストレスを感じていると思うよ。」
学生:「じゃあダメですね、投資銀行業界は。」
僕:「いや、そうと決まったわけじゃない。だってキミは向こう1年か2年の腰掛けとして投資銀行を選ぶのではなく、一生のキャリアとして考えているのでしょう?」


一般論として投資銀行の収入が今のように大幅に落ち込むと中堅の社員に最もしわ寄せが来ます。

既に何年もコーリング・オフィサー(法人マン)をやっているようなベテランは得意先企業と人間関係が出来ているので仮に大手投資銀行をクビになってもブティック投資銀行などでそれなりに生きながらえることが出来ます。

逆に新卒ならそもそもコストが安いので首を切ってもコスト圧縮にはなりません。

だから中堅がいちばんキツイのです。

僕:「今は各社とも自社戦力のpruningをやっている最中だ。」
学生:「Pruning?」
僕:「つまり刈り込みというやつだ。使い物にならないタダ乗り社員(deadwood)をどんどん放り出しているのさ。」
学生:「なんだかキツそうな職場ですね。」
僕:「そうじゃないだろう?本当にキツい職場というのは自分に能力があっても無能な上司がのさばっていて活躍できない職場だ。枯れ枝を払ってしまえば風通しが良くなるでしょ?」
学生:「なるほど!それなら今大々的にリストラを断行している企業ほどチャンスがあるというわけですね。」
僕:「おっとそう来たか!これは痛いところを突かれたね。論理に矛盾があると感じるかも知れないけど、必ずしも今、サイアクの状態になっている投資銀行が就職先として一番というわけではないと思うよ。」


そこで僕は投資銀行には厳然としたブランドの序列があることを説明しました。

僕:「モルガン・スタンレーのエクイティ部、JPモルガンのM&A、ゴールドマンのFICC、、、そういう関係部署に潜り込むことが出来れば会社を変わる時にも次の就職先には比較的困らない。だけどその逆はむずかしい。つまり二流の会社から一流の会社へは転職しにくいということだ。」


その他の注意点として、企業戦略がブレている投資銀行も選ばない方が良いということも説明しました。

たとえばUBSは去年ひとりのトレーダーが大きな損を隠してきた事件が露見した後、グローバルな投資銀行を目指すことを諦めると発表しました。このようにコロコロ戦略が変わる投資銀行は成功しません。