スティーブ・ジョブズ亡き後のアップル(ティッカー:AAPL)がどのように経営の舵を取っていくか注目されるところですが、昨日のiPad新製品の発表を見る限り、同社の将来は明るくないと感じました。

僕がそう思った理由は新しいiPadの意匠に関しては既に成功を収めているiPadというコンセプトを段階的(incremental)に改良し、価格維持を図るとともに、既に獲得した顧客をよろこばせる、ないしは既存のファンからdisられることを恐れる臆病な戦略を採っているからです。

「イノベーションのジレンマ」の著者でハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンは破壊的イノベーションを大体、次のように定義します。


一般的に破壊的イノベーションというものは技術的にはカンタンな発想から生まれたものであり、部品だってあり合わせの標準品を使う場合が多い。そして従来の方法論よりもっとシンプルな構造になっている場合が多い。上得意の顧客が要求するスペックよりザックリと少ない機能しか提供しないので既存客がすぐに破壊的イノベーションに飛びつくことは稀だ。主流のユーザーの好みから遠く離れた処で、これまで存在しないと思われてきた需要を喚起するような場合に破壊的イノベーションはおこりやすい。

新しいiPadではピクセル数が増えただとか、クアッド・コアがどうのこうのとか、そういう事ばかりがプレゼンテーションで説明されていました。「より速く、より多機能で、より完璧な、、、」これらの訴求点は完全に守りに入っている企業が強調する安全な発想であり、(既存秩序をぶっ壊してやろう!)という危険思想とは対極にある凡庸なアプローチです。

ピクセル数を増やしたら電池の消耗が早くなったのでデバイスそのものの厚みを増さざるを得なくなり、結果としてニューiPadは重くなってしまった、、、

この手のトレード・オフは「あれもこれも」という凡庸なエンジニアが陥る典型的な問題であり、「なにが大事で、なにが大事じゃないか」をシビアに判断し、大事じゃないものはバッサリ切り捨てたスティーブ・ジョブズの美意識とは哀しいほどかけ離れています。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
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