3月11日に米国の司法省が「電子書籍価格の設定に際しアップルと大手出版5社は談合した疑いがある」としてこれらの企業を提訴しました。

この直ぐ後で訴えられた大手出版5社のうちマクミランとペンギンを除く3社(サイモン&シュースター、ハーパー・コリンズ、アシェット)は示談に応じました。

アッサリと和解したということはこの3社に少しでも後ろめたい気持ちがあったからに他ならないと思います。

iPadが出た時、最初にアップルと提携したマクミランは他の出版社とこっそり話し合いをする余地は無いわけで、痛くも無い腹をさぐられる思いをしていることでしょう。

しかし後から「それ!バスに乗り遅れるな」とばかりに飛び乗った各社は法廷で争った場合、いかにも形勢が悪いです。

今回の和解は何を意味するのでしょうか?

先ずアップルと大手出版5社は事実上の「最恵国待遇」の取り決めを維持できなくなります

この場合の「最恵国待遇」とは他の小売業者(=アマゾン)にアップルより安い値段で電子書籍を売らせてはならないという暗黙の了解です。この約束は業界ではエージェンシー・モデルと呼ばれており、価格設定は出版社にゆだねられます。

和解に応じる3社の出す電子書籍の価格設定は今後アマゾンやバーンズ&ノーブルなどの小売業者の独自の判断で自由に設定できるようになります。実際、アマゾンでは既にこれらの出版社の電子書籍の価格設定が値下げされました。


アップルと出版大手5社のディールではたしかに(チョッと変だな)と思う点がありました。

それまで$9.99で売られていた電子書籍がアップルと大手出版5社が結託した後で$12.99から$14.99に跳ね上がってしまった背景には経済的合理性というものがありません。

その意味では今回の談合疑惑は遅かれ早かれ批判が向けられることはわかりきっていたとも言えます。

なおアップル、マクミラン、ペンギンの3社は司法省と戦う決意を表明しています。

アップルの株主の立場からすると、ここで同社に意地になって戦って欲しくない気がします。

なぜなら普通、独占禁止法違反のかどで司法省が動き出す時は周到な準備の下に行動を起こす場合が多く、政府の側に勝算が無ければ動き出さないからです。

さらに独占禁止法違反で被告が負けた時、罰金は消費者の受けた実損の3倍を払わされるからです。談合から消費者が蒙った損害についてはいろいろな試算がありますが全米消費者連盟の試算では今年だけで2億ドルとなっています。

なお本屋さんの視点から今回の問題を考えると紙の本と電子書籍との価格差が再び極端に開くので、もう競争にならないわけです。それは本屋さんへの死刑宣告だと受け止める関係者が多いです。