毎月分配型投信が、パフォーマンスを上げている以上に分配金を払っていることが最近話題にされています。

批判の中心はこれらの毎月分配型投信が元本を取り崩している点にあります。

なるほど、資産を育むという視点からは、これらの商品は極めて問題の多い商品でしょう。その点に関しては僕も100%異存はありません。

問題は、「それではなぜこんな酷い商品が売れているのか?」ということです。

これは買い手の気持ちになって毎月分配型投信というものを考えてみればわかります。

日本の投信資産の少なからぬ部分は70歳を超える老人が保有していると思います。(これについてはデータが無いので、持っている人は教えて下さい)

老人の毎月分配型投信の購入動機は「うっかり忘れていても、毎月、ちゃんと分配金が払われるので、それで孫にお小遣いを上げる。孫の喜ぶ顔を見るのがなによりの楽しみ」といものです。

つまり最初から資産を大きく育もうなど、これっぽっちも考えていないのです。

先日、ロスアンゼルスのシンクタンク、ミルケン・インスティチュートの国際金融カンファレンスで英国のヘッジファンド・マネージャー、ヒュー・ヘンドリーが他の5人の識者と登壇し、欧州財政危機に関して対談しました。

その中でヘンドリーは「資産を持っている側の、私のような人間にとって、いま最も気にかけている事は資産をどう増やすか?という問題ではない。むしろ政府によるコンフィスケーション(財産没収)だ」と言い、聴衆からウケを取っていました。

先進国ではどこでも政府の借金がどんどん増え、デモ行進や暴動が増えています。スペインのように失業率が24%を超え、若者の失業率に至っては50%を超えているような国では富の再分配、つまりリッチな連中からもっと財産を奪って、不遇の人たちにばら撒くという概念は、数年先の空論ではなく、いま眼前にある、差し迫った問題なのです。


財産の没収は増税というカタチを取る場合もあるだろうし、貨幣価値の故意の毀損という場合もあるでしょう。(=但し、ユーロ圏の場合、これは一国の意思ではやりにくいです)

つまり「早く使ってしまった方が勝ち」という場合もあるのです。

運用会社や証券会社は、彼らのコア顧客層である老人世代に群がり、自分で自分の足を喰うタコのような商品を売りつけています。これは商品を買った老人たちの長年の労働の果実をエンジョイするという行為を支援する商品です。

ニーズがあるから、そこに商品をあてがう。その意味で毎月分配型投信は老人向けオムツの発想と大して変わらないのです。

それでは運用会社や証券会社が「ニーズがある」という理由だけで毎月分配型投信のような商品だけに集中する事に問題は無いのでしょうか?

それは問題があります。

なぜなら運用のビジネスは資産を増やすことが健全経営のキホンだからです。

つまり食い潰しをしているのは老人だけではなく、運用会社や証券会社も然りなのです。

その意味でギョーカイの自己清算の過程に拍車をかけるような、食い潰し型商品の販売競争に腐心しているのは、ある種、ネクロフィリア(屍体愛好)的であると言えます。