スペインの住宅バブル崩壊の処理問題が新しい局面を迎えようとしています。

それはスペイン国民のローン返済義務に対する考え方が大転換を迎えようとしているということです。

具体的にはこれまで「ローンは何としても返済しなければ、、、」という切迫感があったのが、「みんな払えないのだから、ウチだって払わなくてもどこが悪い」という居直りの態度に変わってきているのです。

これはちょうど犯罪の少ない日本でありながら、駅前に停めておいたチャリだけは、盗んだり、盗まれたりすることが当たり前になっているのと似ています。つまりチャリを盗むことは悪いことだという罪悪感が、この状況に限って希薄なのです。

スペインではニ期連続してGDP成長率が前期比マイナスを記録し、定義上、リセッション入りしました。
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また失業率は24%を超えています。

住宅価格はここへきて落勢を強めています。
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このような八方塞の状況があまりにも国民全体に行き渡ってしまったことで、ローンを払えないという事が「ちっとも恥ずかしい事では無い」という新しい価値観が芽生えているのです。

投資戦略の面から、このことが持つ意味は何でしょうか?

アメリカでサブプライム・ローンが問題化したとき、それらのローンの多くはいわゆるノン・リコースでした。

ノン・リコースのローンでは借り手の責任財産の原資に限定して、取り立てが行われる仕組みになっているので、「払えないのなら、家を放棄してしまえば良い」という居直った考え方が蔓延した結果、銀行の貸付資産内容は急激に悪化しました。

これに対してスペインでは最近まで住宅ローンはリコース型でした。これは借金をしている人は担保を売っても未だ借金の元本が返せないときはいつまでも支払い義務が残るというタイプのローンです。

さて、銀行会計の見地からすればリコース型のローンは借金取り立ての強制力が強いことを根拠に、少々支払が遅延しても「この借り手からはもう借金の取り立ては出来ない」と諦める、つまり焦げ付きに認定することをずっと先延ばしにしてきました。

言い換えれば貸し倒れの問題を帳簿上で正直に認めることを拒んできたわけです。

しかし去年、会計方式が改まり、スペインの銀行が差し押さえ物件をいつまでも抱いたままにするメリットが薄れました。

このため金融機関による不動産の投げ売りが出始めているのです。

上記のような様々な要因が重なった結果、スペインの銀行は今後、焦げ付きの増加を経験すると思われます。

例えばバンコ・サンタンデール(ティッカー:STD)の利回りを見ると13.56%という笑えるほどの高利回りになっています。もちろん、帳簿上はこの銀行は儲かっているし、一見、健全なように見えます。(なおスペインの大手銀行の利益の過半はラテンアメリカから来ています)

しかしこの利回りは普通に考えれば倒産を織り込んだ水準であり、損益計算書で捕捉できない、大きなリスクが潜んでいることを示唆しているのです。